2022 Fiscal Year Annual Research Report
空中超音波による遠隔霧化を利用した食体験拡張システム
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21K19783
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
牧野 泰才 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 准教授 (00518714)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 空中超音波 / 振動知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,空中超音波を用いた遠隔力提示により,液滴を瞬間的に霧化させ,匂いや味など食に関する効果の増強を目的として開始した課題であった.昨年度までに調味料や飲料などに対して超音波を照射し,それらが空中超音波で霧化でき,匂いが強く感じられることなどを検証してきた.一方で当初想定していた,知覚される味の増強については,その効果が得られないことも確認できた.霧化により液滴が舌に接する面積が広がり,味が増強されることを期待したが,有意な差は得られなかった. このような知覚実験の条件として,舌上の液滴に対して霧化を行っている際に,舌の振動知覚特性が手指と異なることが確認された.そこで本年度は,超音波の放射圧を利用して舌の基礎的な振動知覚特性を検証する研究を行った.超音波の非接触力による舌への触感提示では,刺激提示時に舌に物体を直接接触させる必要がないことから,衛生的に刺激できるという特徴がある. 上述のように液体に超音波を照射すると霧化することから,舌の乾燥状態が変化してしまうため,乾燥状態が振動知覚に及ぼす影響を考慮し,本研究では湿潤計を利用して,舌を乾燥させない超音波条件を求め,その強度範囲内で人の舌の振動知覚特性がどのようになっているかを被験者実験により確かめた.その結果,人の指先で特徴的な200Hz程度の振動ピークが存在しないという特徴が確認された.これはその周波数帯域を担うパチニ小体の寄与が少ないことを示唆する結果であり,舌と手指の触知覚の差を示す興味深い結果である.今後舌を対象とした触覚研究のための基礎的な特性として利用できる.本内容は計測自動制御学会SI部門講演会にて口頭発表を行い,優秀講演賞を受賞した. 以上のように,当初期待していた応用は実現できないことが確認されたが,一方で装置の特性を生かして,これまで知られていなかった新しい知覚特性を明らかにすることが出来た.
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Research Products
(2 results)