2021 Fiscal Year Research-status Report
Direct verification and statistical analysis of binding by synchrony hypothesis
Project/Area Number |
21K19803
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
伊藤 浩之 京都産業大学, 情報理工学部, 教授 (80201929)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 視覚皮質 / 同期活動 / 多細胞活動 / 発火数相関 / サポートベクターマシン / デコーディング / ブレインマシンインタフェース |
Outline of Annual Research Achievements |
2匹のネコに赤外線カメラによる視線計測を行い、方位マッチング課題の訓練を開始した。モニター中央の注視点の凝視中に上下に提示される格子パターンの方向が同じ場合は右に、異なる場合は左にサッケードを行うことで報酬が得られる。1匹は正答率80%程度に訓練が進み、もう1匹の訓練を開始した。ネコの視覚皮質に慢性的に埋め込む記録用電極の開発を進め、マウスの視覚皮質への埋め込みで記録の安定性をチェックしている。記録用電極は埋め込み後も刺入深度を変更できるように微小ネジによるマニピュレータを3Dプリンタで自作している。 視覚刺激提示下での視覚皮質から同時記録される複数の細胞活動の単一試行データから提示された刺激の特徴を判別する情報復号化を研究した。16種の異なる法線方向に移動するバー刺激提示下での40試行の多細胞活動データ(細胞数2~15個)に対して、複数細胞の発火数ベクトルを特徴変数とするサポートベクターマシンを適用し、cross-validationにより正答率を計算した。多次元ガウスモデルを用いた我々の先行研究では、モデルに含める細胞数が増加するとモデルパラメタの増大により、過学習が生じ、正答率の低下が見られた。サポートベクターマシンでは過学習は生じず、多次元ガウスモデルより正答率が高いことを確認した。また、同一の刺激を複数回提示しても、細胞の活動度には統計的な変動が生じることが知られている(試行間変動性)。我々の先行研究では、細胞間の試行間変動は相関しており(発火数相関)、発火数相関は刺激依存の変動が生じることを報告している。今回の研究では、発火数相関をゼロとするBootstrapサンプル、発火数相関の試行変動性を無くすBootstrapサンプルを考案し、有限の発火数相関および発火数相関の刺激依存性は個々の細胞の発火数が持つ情報とは独立な付加的な情報を提供することを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネコの方位マッチング課題を行うための訓練システムを構築し、訓練を開始している。1匹に関しては、すでに80%程度の正答率まで訓練が進んでいる。2匹目に関しては、頭部を固定するヘッドポストチェンバーの再装着などで訓練の開始が遅れたが、現在順調に訓練は進んでいる。 視覚皮質からの細胞記録では多数の細胞活動の同時記録が可能なtetrode電極の慢性埋込を計画しているが、長期的な活動記録のためには電極の刺入深度が微調整できることが必須である。十分に小型で、かつ強固である電極チェンバー及び電極マニピュレータの開発には複数の試作を行ってきたが、最終的なデザインを3Dプリンタで作成し、刺入深度はネジの回転で変更することができる。現在は、マウスの視覚皮質での慢性記録実験を繰り返すことで、細胞記録の安定性と電極チェンバーの頑健性の確認を行っている。 視覚皮質から同時記録した多細胞活動データからの刺激方向推定(デコーディング)においてはサポートベクターマシンが有効であることを確認し、発火数相関の刺激依存性が付加的な情報をもたらすことは視覚皮質では初めての報告であり、今後のデータ解析において重要な知見を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
ネコの方位マッチング課題は令和4年度前半期には2匹で完成し、1匹に関しては視覚皮質に記録用電極を慢性的に埋め込み、課題実行中の細胞活動の記録を開始する。離れた位置に受容野を持つ複数の細胞を記録し、それらの方位選択性を同定し、我々が選択した細胞間の同期発火活動の頻度に応じて報酬を与えるニューロンオペラントコンディショニング実験を開始する。無刺激条件下で細胞間の同期発火活動の頻度の上昇が可能であるかどうかを確認する。また、コンディショニングに成功した場合には、方位マッチング課題での正答率の変化に影響が及んでいるかどうかを検討する。 視覚皮質に慢性的に埋め込む記録用tetrodeは、まずはマウスで十分な検証を行ってから、ネコの皮質への埋め込みに移行する。長期に渡って細胞活動が記録できるか、ケージ内での動物の動きによって電極チェンバーに損傷が生じないかなどを検討する。また、同期活動のニューロンオペラントコンディショニングによる情報バインディング機能の向上に関しては、ネコの実験と並行して、マウスでも同様の実験の実施を検討していく。 視覚皮質から記録した多細胞データのサポートベクターマシンを適用した情報デコーディングの研究成果に関しては、日本神経科学会、北米神経科学会での論文発表と合わせて、学術論文の発表を進めていく。
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Causes of Carryover |
研究成果発表のために伊藤と院生が11月に開催される北米神経科学会に海外出張する計画であったため、海外渡航費・滞在費を確保していた。しかし、直前になりオンラインでの開催と変更されたために、確保していた予算の執行には至らなかった。翌年度分として繰り越した予算は日本神経科学会、北米神経科学会での研究発表のための国内外の出張(伊藤と院生)および実験補助員のアルバイト雇用などとして使用する計画である。
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