2022 Fiscal Year Research-status Report
Membrane-less Jamming Gripper
Project/Area Number |
21K19807
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
清水 俊彦 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (30725825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池本 周平 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (00588353)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | ユニバーサルグリッパ / 磁性粉体 / 微小粉体 / センシング / インフラ検査ロボット |
Outline of Annual Research Achievements |
多様化が進む昨今,ソフトマターの特性を活かしたソフトロボティクスは日進月歩である.その一例である膜袋に粉体が充填されたジャミンググリッパは,粉体の充填密度を変化させることで柔剛状態が切り替わるジャミング転移により多様な商品を把持できる万能グリッパである.しかし膜破断による機能不全のため,実用化には至っていなかった. 本研究はジャミングセルによる分散型ロボットグリッパを提案する.ジャミングセルは磁場を発生するコアとそれを覆う磁性粉体からなる構成要素である.セル同士はジャミング結合により強固に結合し,さらに電気回路を自己組織的に形成できる.カメラなどの感覚器やモータなどの運動器を持つセルが結合することで,作業に応じた身体構造をグリッパ自身が獲得できる.個々の要素が結合する分散型グリッパによりあらゆる商品を把持する挑戦的研究である. 本年は分散型の基礎となる膜のないジャミンググリッパを実現すべく,微小磁性粉体を用いたジャミンググリッパの開発を行った.微小粉体は低透気性を有するため,これを真空吸盤のリップ部にもつグリッパは,膜を有することなく粉体を保持することが可能となる.また磁場の強弱による剛性可変であり,先行研究で問題となった針状の凹凸面においても,真空吸着可能であることを確認した.凹凸面に対応した真空グリッパであることから,複数のグリッパが連結し,新たな機能を生み出す,という本研究の基礎的な構想が実現可能であることが示唆される結果を得た.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
対応ハンドの広いハンドの一つとして,万能真空吸着グリッパ ( Universal Vacuum Gripper, 以降 UVG)が開発されている. UVG は膜と粉体で構成されたリップ部により凹凸面での空気漏れに対応した真空吸盤であり,そのため凹凸物・湾曲物を把持することができる. またUVG は膜内の粉体の密度に応じて,その振舞が流体的または固体的に変化する"ジャミング転移現象"を用いて物体を把持するジャミンググリッパ ( Universal Jamming Gripper,以降UGとする ) の機能も有する. しかし,UVGやUGの課題は,表面が鋭利な対象物を把持する際に膜が破断し,機能不全になる点にあった.その課題を解決するためのアプローチとして膜の材質を強化した UGが提案されているが, 柔軟性の低下による把持対象物の制約が発生し,把持性能と耐久性能のトレードオフが問題となっていた. 本研究では,それらの課題を本質的に解決するため,微小磁性粉体の低透気性に着目した,膜を排除した万能真空吸着グリッパを開発した. 粉体に微小磁性粉体を用いて,磁場で吸着保持することにより, UVG と同様にトーラス状の粉体構造を構築し,微小粉体の持つ低透気性により,凹凸面における気密を実現する. 本構造のグリッパにより,滑らかな平面から緩やかな曲面,さらには従来構造では困難であった鋭利状の凹凸面への吸着が可能であることを示した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では,膜のないジャミンググリッパを実現すべく,鋭利な凹凸面に対して吸着可能な微小磁性粉体に基づく万能真空吸着グ リッパを開発し,吸着実験を行った.その結果,永久磁石と微小磁性粉体を用いた吸着グリッパでは,滑らかな平面から緩やかな曲面,鋭利構造を持つ平面への真空吸着に成功し, 微小粉体のみを吸盤とした真空吸着グリッパの実現が可能で あることを示した.また,粉体が棘などの鋭利な構造物のあ る平面に対して密着することにより気密性が確保され,鋭利面に対しても真空吸着ができることを確認できた. しかし,ヨーク構造による電磁石と微小磁性粉体を用いた吸着グリッパでは,粉体を吸着する磁力が小さいため,吸盤のリップ部となる粉体が真空圧に耐えられず,トーラス構造が崩壊することが分かった.これらの結果から,微小磁性粉体を用いて真空吸着グリッパを構成する際,十分な量の微小粉体とそれらを十分な力で吸着把持できる磁力が必要であることが確認された. 今後の課題として吸着力の向上が挙げられる.本研究で開発したグリッパの吸着力は,把持対象として軽い板しか把持できない.本研究結果をもとに,膜の無い真空吸着グリッパの研究においては,グリッパの把持力の計測やその性能向上を目的とした実用的なグリッパの開発が必要である.現段階で考えられる把持力向上のための手段としては,微小粉体の粒径をより細かくし,真空吸着の気密性を向上させることなどが考えられる.
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Causes of Carryover |
コロナの影響で一部実験で必要な部材,特に強力磁石(ネオジム磁石など)の入手が困難であり,代替措置の電磁石などを検討進め,差額を生じる原因となった.
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