2021 Fiscal Year Research-status Report
Wikipediaにおける自己組織的構造の統計力学的研究
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21K19826
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小串 典子 大阪大学, 数理・データ科学教育研究センター, 特任助教(常勤) (90565772)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | Wikipedia / self-consistent metrics |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、研究代表者が共同研究者と共に提案しているWikipediaにおける記事と編集者の編集関係に基づく新しい再帰的評価指標を軸に、データ解析と理論研究を併せて発展させる。具体的には(1)実データ解析から示唆されているWikipediaにおける編集関係の特徴について理論研究を進め、さらに(2)記事に紐づいたカテゴリ等のより詳細な構造についてデータ解析を理論研究の双方を用いて検証する。これにより、Wikipediaのような集合知が持つ性質の普遍性・個別性についての理解を深めることを目的とする。 初年度である本年度はまず(1)から取り組んだ。実際のWikipediaのデータを用いて、編集関係から決まる記事と編集者の新しい再帰的指標を検証し、その結果、提案指標はWikipediaの記事と編集の多様な特徴を良く捉えており、また、Wikipedia記事の編集には異なる編集傾向の多様な編集者が関わっていること等を明らかにした。この成果については投稿論文にまとめ、出版済みである。一方で、例えば既存の次数中心性なども記事の注目度の高さや論争性の強さを反映するが、新規指標であるためこうした既存の指標との関係を整理する必要がある。そこで、実際のWikipediaの編集関係ネットワークを用いてネットワーク構造をランダムに変更していくことで記事の複雑性指標と次数中心性の関係などを明らかにした。この結果をまとめて国際学会で講演を行った。またこの他にも、解説記事の寄稿などを通して研究成果を発信し、今後の研究のための情報交換に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計算機環境の整備にもCOVID-19感染拡大の影響が大きく、そのためデータ解析については準備を行いながら、理論研究を主に進めた。理論研究を進める上で中心的な役割である短期滞在研究についても計画通りに実施できなかったが、オンライン環境も利用しながら出来る限り共同研究者と集まり理論研究を進めてきた。 これにより、提案する新規指標を論文として発表し、また、新規指標と既存指標の関係を明らかにするという基礎を固めることができた。また、実データ解析から分かってきたWikipediaの編集関係の特徴を理解するための理論モデルの構築まで研究を進めており、全体としては研究は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
理論研究が順調に進んでおり遅れていた計算機環境の整備も整ったので、今後は理論研究を継続して推進しながら、当初の計画通り(2)のデータ解析を含めた課題も取り組む。記事のカテゴリー情報などを用いたより詳細な構造の解析と、その結果を反映する理論研究とを併せて進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響を受け、理論研究を進める上で中心的な役割であるKimmo Kaski教授(アアルト大学)、Janos Kertesz 教授(中央ヨーロッパ大学)らとの短期滞在研究は本年度は計画を変更せざるを得なかった。また、研究会についてもオンライン開催に変更されたものが多く、これらに関する経費は次年度に使用することとした。
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Research Products
(10 results)