2021 Fiscal Year Research-status Report
Culturing strategies for uncultivated environmental microorganisms based on genome and medium information
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21K19841
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高見 英人 東京大学, 大気海洋研究所, 特任研究員 (70359165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
五斗 進 大学共同利用機関法人情報・システム研究機構(機構本部施設等), データサイエンス共同利用基盤施設, 教授 (40263149)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 培養化 / メタゲノム / ゲノム情報 / 生理代謝ポテンシャル / Genomaple / マンガン酸化菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
未培養菌の生理代謝機能ポテンシャルを再構築されたゲノム情報から予測し、機能が類似する培養化微生物の培地情報を基に、適切な培養条件を論理的に導くことで培養化に繋げる新しい方法論の開発を目的とした。令和3年度は、培養化対象菌として、これまで培養例が一例しかない嫌気的マンガン酸化菌に着目した。嫌気的マンガン酸化菌は、初期地球環境でマンガンを酸化することによりエネルギーを得ていたと考えられるが、国内にはマンガン酸化物と思われる黒色の鉱物が沈殿する複数の鉄温泉がある。この温泉で得られたマンガン酸化物のメタゲノムから再構築された完成度の高いドラフトゲノムに見出された全遺伝子を Genomapleシステムに供試し、得られた生理代謝機能ポテンシャルを既知生物種と比較したところ、Nitrospira門やFirmicutes門の一部の細菌に類似していた。 そこで、これらの既知微生物の培地情報を収集、整理することで培地成分候補を抽出した。次に、今回の培養化では電子供与体が2価マンガン(MnCl2, MnCO3)となるため、熱力学的に自由エネルギーがマイナスとなる電子受容体(KNO3, NaNO3, iron citrate等)を複数選択し、電子供与体と受容体の組み合わせを変え複数の培地を設定した。この培地に、メタゲノム解析時に用いたマンガン酸化物を含む堆積物の破砕物を加えて、温泉と同じ42°Cで嫌気的に培養を行った。その結果、3週間後に突然培養担体として加えた不織布が黒色に変化し、MnCl2/KNO3, MnCO3/Fe citrateなどの培地でマンガン酸化菌の増殖が示唆された。これらのマンガン酸化物を電子顕微鏡で観察したところ、球状のマンガン酸化物の中に2~3種類のバクテリアが見出された。また、培養液に強い硫化水素臭があるため、ゲノム情報から予測された硫酸還元能が発現していることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタゲノム解析を行ったサンプルを取得した秋田県の八九郎温泉に10月中旬に赴き、マンガン酸化物のサンプリングを行い、培養に用いるマンガン酸化物を含む堆積物を入手した。再構築されたドラフトゲノムに見出されたアミノ酸配列をGenomapleに供試し、得られた生理代謝機能moduleの充足率パターンが類似するNitrospira門やFirmicutes門の一部の細菌の培地情報を取得した。この情報を基に電子供与体である2価マンガンと熱力学的に自由エネルギーがマイナスとなる電子受容体の組み合わせを選択し、複数の培地を作成した。これらの培地にサンプリングで得たマンガン酸化物を含む堆積物の破砕物を加えて、温泉と同じ42°Cで嫌気的に培養を行ったところ、3週間後に突然培養担体として加えた不織布が黒色に変化した。電子顕微鏡観察の結果、マンガン酸化物の形成と菌体を確認することができた。当初は培養に少なくとも1ヶ月以上を要すると予想していたが、それよりも早く培地に変化が生じた。また、黒色に変化した不織布を種菌として継代培養を行ったところ、同じく3週間程度で不織布が黒色化し、継代培養にも成功した。このように、当初の予定よりは若干早く培養化に成功することができたが、培養化菌は顕微鏡観察から2~3種類いると考えられる。そこで、集積培養菌体の菌叢と機能ポテンシャルを調べるため、DNA抽出条件の検討を行い、メタゲノム解析に必要なDNA量を確保する目処を立てることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
作成した複数の培地で嫌気的にマンガンを酸化する微生物の培養に成功した。現状、5μm程度の桿菌、10μm近い長桿菌と1~2μm程度の球菌/短桿菌の2~3種類が観察される。そのため、これらの細菌種がどの分類群に属するのか、また、メタゲノム配列から再構築されたドラフトゲノムのホストが、これらの誰に相当するかを知る必要がある。 そこで、今後はまず、これらマンガン酸化集積培養菌群からDNAを抽出し、ゲノム情報を得る必要がある。これまでの予備実験では、特に炭酸マンガンを電子供与体とした場合、マンガン酸化物間の接着剤の役割を果たしていると考えられるLPS(lipopolysaccharide)様の多糖類がかなり含まれており、実際多糖類の染色に用いられるAlcian Blueで染色されることが分かっている。LPSを多く含むサンプルからのDNA抽出・精製はかなりの困難が予想されるため、LPSを作らない培養条件の検討と併せて、マンガン酸化菌からのDNA抽出法を確立する。一方、電子受容体が塩化マンガンの場合は、LPS量が少なく、PCR反応を阻害しない純度のDNAが少量ではあるが取得できているので、16S rRNAの情報などから培養化された微生物種を特定する。また、集積培養菌群の全ゲノム情報を得るため、DNA遺伝子増幅キットを用いてDNAを増幅し、メタゲノム解析を通じてゲノムの再構築に取り組む予定である。これに加え、培地成分の割合や単純化によって、培養菌体の単一化が可能かどうかについても検討する予定。
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Causes of Carryover |
研究分担者の業務補助としてデータ入力のアルバイト代を計上していたが、適任者が見つからなかった為。今年度も適任者の公募をして作業能率を向上させる予定だが、上4半期で見つからない場合は、データの自動入力化なども含め検討し、それに必要な物品の購入なども検討する予定。
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