2021 Fiscal Year Research-status Report
塩素ドープ炭素質物質を用いる安価な水銀蒸気除去システムの開発
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21K19855
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
坪内 直人 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (90333898)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 環境技術 / 環境対応 / 有害化学物質 / 表面・界面物性 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本の鉄鋼業のHg排出ポテンシャルは、国内の総Hg排出量の30~40%%を占め、その大部分はコークス炉と焼結機の運転に基因する。そのため、環境調和型製鉄プロセスの開発には、石炭と鉄鉱石の加熱過程におけるHgの発生挙動の解明とケミストリーに基づいたHg吸着除去剤の開発が重要である。 そこで、令和3年度は、石炭乾留時と鉄鉱石焼結時のHg放出に関する研究に取り組み、その結果、石炭中のHgは100℃を超えると脱離し始め、その速度プロファイルは300~350℃に主ピークを与え、多くは400℃以下の低温域で放出されることを見出した。一方、鉄鉱石中のHgは金属HgとHg2+の形態で排出され、これは主に100~400℃で生じ、また、速度プロファイルは250~700℃に複数のピークを示すことが判明した。次ぎに、鉄鉱石中のHgの存在状態を検討するため、化学的連続抽出技術を使用して水・AcOH/HCl・KOH・HNO3・HCl/HNO3に可溶なHg種に分別し、各フラクションを昇温脱離測定に供したところ、鉄鉱石の種類に関わらず950℃までに排出されるHgの大部分は水溶性の形態に基因することが見出された。これは、洗浄法による事前Hg除去の可能性を強く指摘する。 本成果は、鉄鋼産業のみならず環境問題として顕在化しつつある微粉炭燃焼や廃棄物焼却からのHgの排出量極小化技術の開発やSDGsの達成に直結すると期待され、その社会的意義は非常に大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は、製鉄原燃料の加熱時における微量の水銀種(金属HgやHg2+)の排出速度を定量化する一方、化学的連続抽出法と昇温脱離法を高度に組み合わせる独自の手法でHgの存在状態と排出Hg形態の関係を明らかにした。このように、本課題研究は順調に進展しており、令和3年度に掲げた目標を充分に達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
本申請者の研究に依ると、HgとClは容易に反応する。従って、炭素表面に化学的に安定なC-Cl結合を有する炭素質物質を製造できれば、既設設備では取り除けない金属HgをHgCl2として固定化できると期待できる。 そこで令和4年度は、塩素で表面修飾した炭素ベース水銀吸着剤の製造に取り組む。実験では、安価な低品位褐炭から製造した炭素質物質を既設の石英製ガス流通式固定床反応器に充填したのち、100~1000ppmHCl/HeやCl2/Heを流通させ、Clを表面にドープした炭素質物質を製造する。調製した吸着剤の性能評価には、既設の固定床と流動床反応器を使用する。焼結機ガスやコークス炉ガス中のHgの化学形態は、金属Hg、酸化水銀(HgO)ならびにHgCl2に大別されるので、反応器内に充填した吸着剤上に、Hg発生器を用いて5~100ppbの 金属Hg/He、HgO/HeおよびHgCl2/Heを流通し、出口ガスを可搬式煙道ガス水銀連続測定計でオンライン分析する。実験では温度・空間速度・Hg濃度をパラメータとして変化させる。また、実際の排ガスを模擬した雰囲気(例えばH2が50%、CH4が30%、COが5%、CO2が5%、H2Oが5%のN2バランスガス)をマスフローコントローラーで調製し、このような雰囲気下でのClドープ炭素質物質のHg吸着性能に及ぼす共存ガス成分の影響を検討する。これらのガス成分の濃度変化は、高速GC・光音響式マルチガスモニター・ガス検知管などを用いて測定し、さらに、気相中と固相中のHgの分析も推し進め、以上を総合して吸着剤の性能と寿命を決定する支配要因(例えばSO2やH2Oの濃度など)を明確にする。
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Causes of Carryover |
令和3年度は、石炭乾留時および鉄鉱石焼結時に排出される微量のHgを精度よく「オンライン分析」できる独自の手法を確立することに成功し、その結果、多くのデータを効率よく取得でき、論文等の成果にも実を結んだ。令和4年度は、繰り越し金の一部を人件費に使用し、マンパワー増+オンライン分析により、さらに研究を加速化させる。
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Research Products
(7 results)