2021 Fiscal Year Research-status Report
Compensation for lowered photosynthesis by polyamines and terestorial ecosystem conservation
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21K19864
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石田 厚 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (60343787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安元 剛 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (00448200)
坂田 剛 北里大学, 一般教育部, 准教授 (60205747)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | 光合成 / 乾燥適応 / 小笠原 / ポリアミン / CO2濃縮機構 / ルビスコ / CO2/O2比親和性 / 葉肉コンダクタンス |
Outline of Annual Research Achievements |
全生物の細胞中に普遍的かつ高濃度に存在するポリアミン類は水溶液中にCO2を捕捉・濃縮し、サンゴの石灰化や光合成における炭素固定反応を促進する作用があることが申請者らによって示されてきた。本研究課題は、陸上生態系の大きな炭素吸収源である森林樹木を対象に、ポリアミンによる光合成促進作用がどのような環境下で強く働くのか、特定の種で強く機能しているのか、乾燥地の森林生態系樹木の乾燥耐性や適応・進化にどのように関わってきたのか解明し、陸域生態保全につながる知見を得る。 ポリアミンによる光合成促進作用を評価するためには、葉肉CO2コンダクタンスの種間差や経時変化を評価することが必須である。葉肉CO2コンダクタンスの算出に必要なルビスコの基質親和性(CO2/O2への比親和性;Sc/o)の値は、これまで先行研究で得られた作物での値を代入することが多かった。この課題では、葉肉コンダクタンスの多種比較を可能にするため、小笠原に生育する20種以上の樹木種のSc/oを評価した。その結果、亜熱帯気候の単一島内での樹木種から得られた値であるにもかかわらず、Sc/oには2倍近い連続的な種間差が存在することが新たに見出された。さらに5樹種を対象にして日中の葉緑体内のCO2濃度を評価したところ、Sc/oの低い(CO2への親和性が低い)ルビスコを持つ種は葉緑体内のCO2濃度が高い傾向があることが示された。ポリアミンによるCO2捕捉・濃縮機構は葉緑体内のCO2濃度を高くする働きがあると考えられるため、乾燥地の森林生態系における樹木の光合成生産にはポリアミンとルビスコが相補的に関与している可能性を見出すことができた。また葉内に含まれるポリアミンの定量を試行し測定精度を添加回収試験により評価したところ、研究開始当初は30-400%であったが、今年度は70-125%程度の添加回収率が得られ、分析精度の向上も得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
R3(2021)年度は,計画していた調査・実験の大半を行うことができた。得られた結果は当初予想していた「ポリアミンによる光合成促進が乾燥地の森林生態系樹木の乾燥耐性に関わる」ことを強く示唆しており,おおむね順調に進捗している。また,当初予想していなかった,ポリアミンによる光合成促進とルビスコの酵素化学的性質に相補的な関係がある可能性を見出すことができ,挑戦的研究(萌芽)として,新しい研究展開を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
小笠原での野外調査、およびポット苗木実験により、乾燥ストレスによるポリアミンによる光合成促進の誘導現象の有無や,その生理反応における樹種間差についての調査を行う。ポット苗木はすでに育てて準備してきている。ここでは、独自に化学合成したポリアミン生合成阻害剤や輸送体阻害剤なども使用し、ポリアミンによる光合成促進の効果を調べる。しかし現時点では,ポリアミン生合成阻害剤を用いた場合、分子構造の類似のため、ポリアミン定量に技術的な問題が生じることが判明してきている。今後この点も解決し、阻害剤実験でもポリアミンの定量ができるように工夫していく。
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