2022 Fiscal Year Annual Research Report
ヘテロな肝細胞の生理学的役割分担の解明と創薬や医療への応用
Project/Area Number |
21K19885
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
酒井 康行 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00235128)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西川 昌輝 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 講師 (40843149)
新宅 博文 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 理研白眉研究チームリーダー (80448050)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | 肝細胞 / 多核 / ゾネーション / 肝機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝細胞には単核と二核が混在しているうえ、核内の染色体数も2n、4n、8nと多様である。近年、これらヘテロな肝細胞の肝小葉内での分布が異なることが明らかとなり、肝機能Zonationとの関係が示唆されている特に二核細胞は、例えば成熟ラット肝では約60%を占め、単純に即座の分裂への備えだけでなく、細胞内機能分担などの仮説が考えられるが、生理学的な役割は未解明である。これら二核細胞の生理学的役割を解明するためには、細胞レベルではなくそれぞれの「核」における遺伝子発現を調べることが不可欠である。しかし、単一細胞や単一核レベルの網羅的遺伝子発現解析技術の近年の大幅な進展にもかかわらず、多核同一細胞内の核ごとの遺伝子発現の比較研究は皆無である。本研究では、成熟肝細胞の約60%を占める二核細胞の二核を単一の核に分離するため、細胞質溶解後に細胞骨格形成阻害剤による化学的処理を行なった。細胞質溶解前後での核と細胞質RNAの蛍光画像から、細胞質溶解後には細胞質RNAはほとんど残存しておらず核RNAの純化が確認された。また、細胞骨格の可視化から、細胞質の溶解後も細胞骨格は残存し、二核は分離されないことが分かった。タンパク質分解酵素処理であるトリプシンEDTAとプロテイナーゼKによる処理では、共にかろうじて二核は分離したものの、いずれも核膜の膨張や破壊を伴った。一方、細胞骨格形成阻害剤(ラトランクリンB)処理後に細胞質を溶解した二核では、二核が形を保持したまま鮮明に分離することが確認された。以上より、ラトランクリンB処理が「二核の分離」において非常に有力な化学的処理であることを見出した。さらに、この条件下でオートマニピュレーターを用いて二核を個別回収し、シングル核から次世代シークエンス用ライブラリを作成し、同一細胞内の核ごとの遺伝子発現の比較を試みた。
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