2021 Fiscal Year Research-status Report
免疫系に働きかけるバイオセラミックスの機能発現機序の解明
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21K19930
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
相澤 守 明治大学, 理工学部, 専任教授 (10255713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 重徳 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (50348801)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2024-03-31
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Keywords | バイオセラミックス / バイオマテリアル / 免疫細胞 / 抗腫瘍効果 / イムノセラミックス |
Outline of Annual Research Achievements |
生体機能の一部あるいは全部を代替する目的で開発されている「バイオマテリアル」は人工材料であるため、免疫による拒絶がほとんど生じないことがメリットの一つである。しかしながら、細胞と接触する材料表面を巧みに設計することにより、材料が積極的に免疫系に働きかけ、免疫細胞を活性化することができれば、現在がんの治療法として注目されている「養子免疫療法」に新機軸を提案できる。我々はこれまでに免疫系に積極的に働きかけるバイオセラミックス「イムノセラミックス」の試製に成功している。本研究では、これまでに得られている知見を足掛かりとして、免疫系に積極的に働きかけるバイオセラミックスの機能発現機序を免疫細胞と材料との相互作用を通して解明する。バイオマテリアルという人工材料を主軸に据え、その表面での免疫細胞との相互作用により免疫賦活効果を発現・制御する試みは挑戦的な研究であると考えている。 本研究の目的は、人工材料であるバイオマテリアルの表面を巧みにデザインし、材料単独で免疫賦活効果を最大限に引き出す材料および表面の設計とその機能発現メカニズム解明の調査を通して「材料表面と免疫系細胞との相互作用」を包括的に理解し、その学理を新しいがん治療などへ展開することである。 上記の目的を達成するため、これまでに我々が免疫賦活効果をもつことを明らかにした「ホウ素含有アパタイト(BAp)」をキーマテリアルとして使用する。実際、2021年度はBApを主結晶相として含むCaO-P2O5-SiO2-B2O3(CPSB)系複合セラミックスを作製し、その材料特性とを明らかにするとともに、研究分担者との協働により抗腫瘍効果を検証するための動物実験モデルを確立し、CPSB系セラミックスが養子免疫療法のための培養基材として有用であることを明らかにした。この成果を特許出願することを計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的を達成するため、既に免疫賦活効果を明らかにしている「ホウ素含有アパタイト(BAp)」をキーマテリアルとして、免疫学を専門とする東京医科歯科大学の永井重徳准教授と密接に連携して以下の3つの研究課題を併行して推進している。 1) イムノセラミックスの作製と材料科学的評価 2) イムノセラミックスの免疫機能発現メカニズムの解明 3) イムノセラミックスによる抗腫瘍効果の検証 2021年度は、優れた免疫賦活効果を示すことが判明しているホウ素含有アパタイト(Bap)セラミックスを活用した。BApを主結晶相として含むCaO-P2O5-SiO2-B2O3(CPSB)系複合セラミックスを作製し、その材料特性とを明らかにするとともに、研究分担者との協働により抗腫瘍効果を検証するための動物実験モデルを確立し、CPSB系セラミックスが養子免疫療法のための培養基材として有用であることを明らかにした。実際、ホウ素が含有されている水酸アパタイト(HAp)を比較材料とし、CPSBセラミックスを用いて免疫細胞を活性化させ、その活性化した免疫細胞を別に作出した担癌マウスにインジェクションしてその抗腫瘍効果の検証を行なった。腫瘍サイズの計測やヘマトキシリンエオジン染色および免疫染色による組織学的評価により、Ca/Pモル比を1.67に調整したCPSB系セラミックスはて有意に高い抗腫瘍効果を示すことが分かった。この成果を知的財産につなげるべく、所属機関の知財部門と相談中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的を達成するため、以下の3つの研究課題を継続していく。 1) イムノセラミックスの作製と材料科学的評価:優れた免疫賦活効果を示すBApセラミックスを活用する。この方法では、HApを出発物質とし、酸化カルシウムとホウ酸をBApの化学量論組成となるように混合し、これを成形・焼結させるという極めて簡単なプロセスである。ここでは免疫細胞の機能を最大限に引き出す化学組成や幾何学的要因(表面粗さなど)、表面特性(濡れ性・表面電位など)を決定する。 2) イムノセラミックスの免疫機能発現メカニズムの解明:BAp中のBO2基がB(OH)3に解離し、細胞の糖鎖部位とOH基とが相互作用して免疫刺激が導入された結果、免疫賦活効果が発現すると作業仮説を立てている。BApセラミックスに対する免疫細胞の接着とそれに続く免疫刺激のカスケードを探ることにより、免疫機能の発現メカニズムを解明し、得られた知見を材料創製にフィードバックする。免疫細胞は一般的には浮遊細胞であるが、培養による刺激で接着分子が発現し、凝集や付着がみられることもある。実際にBApセラミックス上で免疫細胞を培養後に走査型電子顕微鏡および蛍光顕微鏡で観察したところ、T細胞が接着していたことから、材料からの免疫刺激により細胞が接着した可能性が高い。 3) イムノセラミックスによる抗腫瘍効果の検証:上記のBApセラミックスを用いて、免疫細胞を活性化させ、その細胞を使用して実験動物による抗腫瘍効果の検証を行なう。まず、現在進めている予備的検討に立脚して評価モデルを構築する。その後、構築した評価系を用いて腫瘍サイズの計測やヘマトキシリンエオジン染色および免疫染色による組織学的評価を推進する。 最終的に上記の課題1, 2, 3の知見を総括し、「材料表面と免疫系細胞との相互作用」を包括的に理解するとともに、その学理を新しいがん治療などへ展開する。
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