2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K19936
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Research Institution | National Institutes for Quantum Science and Technology |
Principal Investigator |
山谷 泰賀 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 上席研究員 (40392245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
澁谷 憲悟 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (20415425)
高橋 美和子 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 先進核医学基盤研究部, 主幹研究員 (00529183)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | PET / 陽電子 / ポジトロニウム / 核医学 |
Outline of Annual Research Achievements |
核種から放出された陽電子は、周囲の電子と対消滅し511keV放射線ペアになる。これを同時計数の原理で計測し、放射能分布を画像化するのがPETである。体内で放出された陽電子の約3割は、陽電子と電子のスピンが平行なオルト-ポジトロニウム(o-Ps)を形成する。そして、周囲のスピン平行な電子をピックオフしたり、酸素分子など不対スピンを有する常磁性物質とスピン交換反応したりすると、消滅して511keV放射線ペアとなる。本研究では、陽電子が511keV放射線ペアに変わるまでのわずかな時間差(Ps寿命)をがん酸素状態などの診断情報として使う量子PET(Q-PET)のコンセプトを提案し、その実現可能性を明らかにすることを目的とした。1年目となる2021年度は、PET検出器ペアを用いた検証システムを構築した。具体的には、4.2mm角のLFSシンチレータを12×12でアレイ化し,MPPCアレイに1対1で結合した。Time-of-flight(TOF)分解能は250 psである。この検出器ペアを10 cmの距離で対向する向きに置いた。線源は、1275 keVの即発ガンマ線を出す陽電子放出核種であるNa-22を使用した。2つの線源をそれぞれPs寿命が既知の2種類の標準物質(Ps寿命1.62±0.05 ns、2.10±0.05 ns)にくっつけた。線源の放射能が弱いため(約1 MBq)、その代わり測定時間を長くした(1時間)。測定データから即発ガンマ線(1275keV)と511keV同時計数の三重同時計数事象を抽出し、511keV同時計数から放射能分布画像を作成した。その画像の各点において、1275keVと511keV消滅光子の検出時刻差スペクトルを取得し、Ps寿命を計算した結果、それぞれ1.64±0.05 nsと2.10±0.07 nsの値が得られ、いずれも認証値と不確かさの範囲内で一致した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Ps寿命の2次元イメージングの実証に成功し、量子PETのコンセプト実証の最初の段階をクリアできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる2022年度は、TOF時間分解能を改善する検出器要素技術を確立する。放射線は、シンチレータで微弱な可視光に変換されるが、シンチレータや受光素子自体の高速化については要素技術が成熟しつつある今、シンチレーション光が受光素子に届くまでの時間差を短くすることに主眼を置く。具体的には、シンチレータの表面状態と遮光材について検討する予定である。シンチレータの表面状態については、通常の鏡面研磨と化学研磨(薬品による表面平滑化処理)の二択に加えて、鏡面研磨のあと一面のみやすり処理で粗面にする場合(1面粗面)と、1面の半分のみ粗面にする場合(1/2面粗面)も検討する。表面が鏡面だと、シンチレーション光が受光素子に到達するまでの光路長が長くなり、時間分解能が悪くなると予想される。遮光材については、鏡面状シートのESRフィルム、拡散シートのLumirror(ルミラー)またはTeflon(テフロン)テープの中から、もっともTOF時間分解能を短くできる素材を選択する予定である。そして、予算の許す限り検出器数を増やして放射線計測効率の改善を図る。このように検出器の時間分解能と計測カウントの統計量を増やすことにより、Ps寿命の推定精度の高めることができる。また、2021年度のPs寿命2次元イメージングの成功を受けて、2022年度は3次元イメージングへ挑戦する。そして、得られた実験データを外挿することにより、核医学臨床におけるPs寿命イメージングの実現可能性や求められる検出器や装置のスペック、さらには画像診断への寄与について考察する。
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Causes of Carryover |
研究当初は、ラボの既存検出器ではTOF分解能が十分でないと予想していたが、既存検出器でもデータがうまく取得できたため。既存検出器による初期検証を優先することとし、当初予定していたシステム開発材料費の支出を2022年度に持ち越すこととした。その結果、TOF分解能を上げるための基礎研究(試行錯誤)を並行して行うことができ、シンチレータの表面状態や反射材材質の選択が鍵であることが分かった。2022年度は、シンチレータ条件の最適化の最終確認を早めに済ませて、実証システム開発を進める計画である。
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Research Products
(9 results)