2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K19938
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
安浦 雅人 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (20760408)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
芦葉 裕樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (90712216)
平間 宏忠 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 主任研究員 (40748779)
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Project Period (FY) |
2021-07-09 – 2023-03-31
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Keywords | エマルション / デジタルアッセイ / 光センシング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、デジタルエマルション法を用いた薬剤耐性菌感染症の迅速診断技術開発に向けた液滴高速生成・測定系の構築を実施した。膜乳化法に用いるポアサイズ等の探索により、5~50μmφのエマルション(sub-pL~pLサイズ)について、油中液滴を1分以内に総体積1mL以上得ることに成功した。生成された液滴を短時間で観測する光学系として、油中液滴の油相と水相の屈折率を調整し、透明化した液滴を角型セルに充填し、シート光照射による2次元測定をスライス状に繰り返すことで擬3次元計測を可能とする測定系を開発し、前述の液滴生成系を用いて作成した模擬サンプルを用いて、厚さ10mmの液滴集合体に含まれる蛍光色素入り液滴を5分で検出・識別することに成功した 。撮像条件や画像データ処理プロセス等の最適化により、測定時間は1分以内に短縮できる見込みである。屈折率の調整は、油相材料を混合することで水相の屈折率と整合させる形で行い、厚さ15mmの液滴集合体に関してヘイズが20%未満の透明化液滴スタックの形成に成功した。光学測定系は、電動ステージを用いて被測物の自動昇降によりシート光を最大5000μm/sで掃引できるシート光掃引系と、掃引と同期した撮像を行う連続断層像撮像系を開発した。これらの技術を組み合わせることにより、10の9~10乗個の液滴を1分以内に測定するという、既存のエマルション用フローサイトメトリー系よりも3桁程度高い処理能力を実現しうる計測系構築の技術的基盤を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
数mL単位のサンプルを素早く液滴化する高速液滴生成系と生成した多量(10の9~10乗個)の液滴を短時間で計測する大量液滴処理系ともに、予定通りか上回る結果を得ており、概ね順調に進展していると言える。特に、屈折率調整により透明化した液滴を用いた擬3次元測定の手法開発により、既存のエマルション用フローサイトメトリー法(数十~百万events/min)では達成不可能な10~100億events/minに相当する処理速度を達成しうる系を構築した意義は大きいと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
大量液滴生成系の改良により、均一サイズ液滴生成の1分以内総体積5~10mL生成の実証を目指す。また、開発した観察光学系による計測精度の検証と改善を行い、定量性とダイナミックレンジを明らかにした上で、sub-aM(1mL中に数十個相当)レベルの検出感度を実現する光学計測系への改良を目指す。加えて、薬剤耐性菌検出へと繋げるべく、開発した大量液滴生成系及び透明化液滴技術の生体試料への適合性を検証するとともに、代謝活性測定に限定することなく開発計測系に好適な検出用試薬の探索を行う。
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Causes of Carryover |
物品費として主にフローサイトメトリー系に代わる流路とシート光を組み合わせた2次元的計測系の開発を想定し、試作機開発のための部材購入等を考慮した金額を計上していたが、より高速の計測が流路なしで可能となる擬3次元測定系の開発を着想し、手持ちの既存の光学系との組み合わせにより実現に至ったため物品費等が予定よりも大幅に抑えられた。また、コロナ禍の影響で予定していた学会等出張は全てオンライン開催などに代替されたため、出張費が不要となった。主にこれらの理由で次年度使用額が生じた。翌年度は、開発光学観測系及び大量液滴生成系の改良により、定量性・ダイナミックレンジの改善や大容量サンプルの液滴化実証を行うべく、部材発注が見込まれるほか、開発した大量液滴生成系及び透明化液滴技術の生体試料への適合性を検証するための市販試料購入や、大量液滴観測系に適した測定試薬の探索を、代謝活性測定に限定することなくより広い範囲で行うため、当初想定していた2年度目の必要額を超えることから次年度使用額分を使用する。
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