2022 Fiscal Year Research-status Report
The Place Where Narration and Musical Performance Intersect: A Study of Kazakh Music Making at Dinner Parties, "Otyrys"
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21K19944
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
東田 範子 東京藝術大学, 音楽学部, 講師 (40904587)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 中央アジア / カザフスタン / 語りと音楽 / 音楽民族学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も諸事情により現地調査を断念せざるを得なかったが、一方で、現地の音楽家とのオンラインによるインタビューを少しずつ進めており、情報を整理している。また、器楽ジャンル「クイ」の各曲にまつわる語りは以前から文字化されてきたが、それらを集大成した書籍(邦訳『先祖の言葉:クイの物語』、2012年)に着目し、収録されている350余りの語りの内容を、登場人物/動物、教訓の有無とその種類、楽曲のサブジャンルといったパラメータで分類する作業を始めた。楽曲にまつわる語りは、その場で即興的に行われる一回的な面を持つが、内容に関しては、世代を超えて継承されてきたものが共有されている例が多い。通常のステージ演奏で語りが行われなくなっている現在、音楽家たちは、曲にまつわる語りについて口伝えで学ぶ以外に、上述のような文字化された情報も大いに参照しているため、その代表的な文献の精査は重要な意味を持つ。 23年2月には、カザフスタンで発行された刊行物に、ドンブラ演奏と語りが交互に生成する家庭の宴席オトゥルスの重要性に関する論文を寄稿した(邦訳「ドンブラの身体的・音響的奏法について」)。23年3月には、中央アジア学会年次大会にて、ドンブラによる演奏終了時にみられる特徴的な習慣について発表を行い、奏者が語りにおいて演奏を「引用」する形が、シャマン的音楽家像の表徴である可能性について指摘した。発表を通じ、中央アジアのシャマニズムと音楽の関係について改めて研究史を精査する必要性を認識するとともに、語りの場で行われる演奏習慣とカザフ音美学的志向性についても知見が得られたので、最終年度に向けてさらに内容を追究する予定である。また、23年中に出版予定の中央ユーラシア文化事典(丸善出版)に、中央アジアの遊牧民と定住民の音楽に関する項目を寄稿し、演奏における語りの重要性について触れた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
感染状況に対してタイムリーな判断が取れず、通常業務との兼ね合いにおいて現地調査を行う時機を逸してしまった点が、本研究の遅れの最も大きな要因である。また、レクチャーコンサートの開催を計画しでいたが、出演者との都合がつかず延期となった。どちらも最終年度に実現する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
新しい所属機関の紀要論文に、ドンブラの楽曲の語りに関する論文を8月までに投稿することを計画している。 国内の奏者によるレクチャーコンサートと(7月)、カザフスタンの奏者によるオンラインコンサート(秋期)を行うべく打診している。 また、8月には3週間の現地調査を予定しており、渡航に向けて現地の関係者と調整中である。
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Causes of Carryover |
現地調査ができなかったことにより、旅費および人件費の使用に至らず、研究計画を一年延期することにした。
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Research Products
(2 results)