2021 Fiscal Year Research-status Report
言語能力のない動物も含めた“他者”解釈のための一般的理論の構築
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21K19951
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中谷内 悠 九州大学, 人文科学研究院, 助教 (90908170)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 動物の心 / 動物認知 / 思考と言語 / 言語表象・画像表象 / 不確定性 / 心的内容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は言語能力ある生物と無い生物の思考能力・概念能力の違いに焦点を当てた研究を行った。 言語能力のある生物の場合とは異なり、言語能力のない生物の場合、その思考を言葉で正確に特徴づけることができないという現象(不確定性)に着目した一連の議論の整理・考察を行い、以下の点を明らかにした。 (1)言語能力のない生物への思考帰属に関しては、明確に真偽が問えるわけではないが、適切さの度合いに関する判断が可能であることを理由に、少なくとも消去主義的な考えは支持されないことを明らかにした。 (2)不確定性を表象の形式の違いによって理解しようとする、動物認知の哲学研究者であるJacob Beckのアプローチのメリットと問題点を明らかにした。具体的には、画像表象と言語表象の違いに着目し、言語能力をもたない生物は画像表象しかもたないという点で言語能力をもつ生物とのあいだに違いがあり、それによって不確定性をうまく説明できる点でBeckの考えにはメリットがあることを確認した。他方で、表象の形式の違いに基づく説明には、表象内容の特徴づけに関わる困難が含まれることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
議論の整理や考察は順調に進んでいるものの、得られた成果を論文にまとめ検討している段階にあり、論文を投稿するに至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は前年度の成果を論文として投稿し、修正・再投稿を繰り返し、関連雑誌に論文を掲載させることを目標とする。 さらに、当初の計画通り、思考と行為の解釈の3つのレベルを区別し、各レベルでの解釈方法について順に考察を進めていく。そして、得られた成果を学会で発表し、論文の掲載を目標とする。
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Causes of Carryover |
英語論文校閲費、雑誌投稿費のための支出を計画していたが、論文投稿に至らなかったため。2022年度に振り替えての実施を計画している。
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