2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K19960
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
矢島 正豊 (矢島礼迪) 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 助手 (40906591)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 法華懺法 / 法華三昧行法 / 魚山叢書 / 法華験記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本の平安期に成立した仏教儀礼である法華懺法を検討の対象とし、その成立過程と展開を明らかにすることを目的としている。本年度は、法華懺法の原典である智顗撰『法華三昧行法』の調査収集と内容の検討を中心に行った。 『法華三昧行法』の調査収集については、天王寺(東京)、西教寺(滋賀)、叡山文庫(滋賀)にて調査と資料収集を行った。研究代表者は、これまでに東京大学史料編纂所所有の大原勝林院蔵『魚山叢書』(写真帳)を調査し、同書所収の『法華三昧行法』(写本)が現存する『法華三昧行法』の中で最も古い内容を伝えるものであることを明らかにしている。本年度は、天王寺、西教寺、叡山文庫に所蔵されている版本の『法華三昧行法』を調査することができ、その結果、これらの版本が『魚山叢書』所収本に示される内容を底本にしていることが判明した。また、『法華三昧行法』の諸本には複数の往生思想が示されているが、上記の調査により、弥勒菩薩の兜率天往生を示す本が原型に近いと推定することもできた。法華懺法の儀礼次第成立については不明な点が多いため、往生思想との関係も踏まえて今後も検討を進めていく。 この他には、平安中期の天台僧鎮源撰『法華験記』にみえる法華懺法の記述や室町期以降に著された法華懺法の註釈書から、法華懺法が儀礼としてどのような役割を担っていたのか、また、各時代で法華懺法がどのように認識されていたのかについても検討を行った。その結果、本来は修行者の行であった法華懺法が平安中期頃から臨終行儀や追善儀礼として修されていることがわかり、儀礼として成立していく過程の一端を考究することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
法華懺法の成立過程の検討に時間を要しているため、成立後の展開については調査があまり進んでいない。
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Strategy for Future Research Activity |
法華懺法の成立過程については、資料の現存状況から明確な結論を得ることは難しい。よって次年度は、仏教学の文献だけでなく、歴史、芸術、芸能、建築分野の文献と先行研究にも検討の範囲を広げ、成立過程を可能な限り解明していく。 法華懺法成立後の展開については、宮中で行われた御懺法講の記録一覧作成を一つの目標としているため、次年度はデータベース等を調査し、一覧表の作成を目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響で調査が当初の予定よりも実施できなかったため、旅費と関連書籍購入のための物品費において次年度使用額が生じた。 次年度使用額については、次年度の旅費や物品費で調整する。
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