2021 Fiscal Year Research-status Report
Comparative Study of the Little Theatre Movement in Japan and Korea: Focusing on Two Theatre Groups in the 1970s
Project/Area Number |
21K19961
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
金 潤貞 早稲田大学, 坪内博士記念演劇博物館, 助手 (30906566)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 太田省吾 / 転形劇場 / 小劇場運動 / 沈黙 / 小町風伝 / 抱擁ワルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1970年代に日本と韓国でそれぞれ小劇場運動をしていた二つの劇団、「転形劇場」(日本)と「エジョト」(韓国)を取り上げ、上演した戯曲を中心に二つの劇団を比較・考察するものである。 日本と韓国の小劇場運動に関する全般的な調査とともに一年目には、「転形劇場」に焦点を当て、文献調査および戯曲、上演映像、批評、プログラム、チラシ、チケットなどの公演関連資料調査を行なった。具体的には、早稲田大学演劇博物館所蔵の上演資料を用い、劇団「転形劇場」の主宰者である太田省吾の演劇論書『裸形の劇場』(而立書房、1980)と『動詞の陰翳』(白水社、1983)を検討しつつ、太田省吾作の戯曲『小町風伝』(1977)と『抱擁ワルツ』(1979)を分析・考察した。 『小町風伝』については、主人公の「老婆」に焦点を当て、1970年半ば以降、太田の作品において際立ちはじめた「老い」の意味を「沈黙」と対照させて考えた。一方、『抱擁ワルツ』については、太田が表現しようとしていた「生命存在」の表し方とそのプロセスについて考えようとした。この二つのアプローチにより、「老い」と「生命存在」の概念、それらと「沈黙」の関係性が明確になり、太田省吾の沈黙が持つ独自性が明らかになりつつである。 研究成果として、早稲田大学演劇博物館紀要『演劇研究』に論文(沈黙する主人公―太田省吾作『小町風伝』(1977)の「老婆」)を掲載し、2021年度日本演劇学会にて口頭発表(「生命存在」を描く―太田省吾作『抱擁ワルツ』を中心に)を行うことが出来た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一年目には、韓国の劇団「エジョト」についての研究成果がないため、計画通り進展したと評価が出来ない。コロナ禍の影響で海外出張が難しく、資料収集が出来なかった点、特に2022年2月に「エジョト」の主宰者であるバン・テスが研究対象である1970年代の代表的な作品をソウルで演出・上演したが、観に行くことが出来なかった点が残念だ。 しかし、すでに手元にある資料を活用した研究は可能だったと思い、反省しながら、やや遅れていると判断をした。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和4年度には、1970年代の日本と韓国の小劇場運動に関する調査から当時の両国の演劇が共通的に西洋演劇の流れにも影響を受けていたと考えられたため、少し視野を広げ、同時代西洋演劇界の状況についても調査を行う必要がある。 「転形劇場」の上演作品に関しては、太田省吾の演劇思想が書かれている『飛翔と懸垂』(而立書房、1975)、『裸形の劇場』(而立書房、1980)、演劇手帖『動詞の陰翳』(白水社、1983)などを一層綿密に検討しつつ、引き続き1970年代に発表された戯曲を分析・考察する。今までの成果と合わせて彼の1970年代の作品についてまとめた論文を12月に博士学位論文として提出する予定である。 「エジョト」の上演作品については、資料の追加収集を進めていくと同時に、主宰者のバン・テスの演劇論と上演した作品の戯曲を対照しつつ分析・検討する。適切な発表場所を探し、成果発表を行う。コロナ禍の状況により韓国現地への訪問調査が不可能である場合、オンラインを活用し、または資料関係者に調査の協力を求めることにする。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍の状況により、予定していた国内出張が出来なかった。出張の目的の一つであった学会はすべてzoomにて行われ、想定していた旅費、印刷・コピー費用などから次年度使用額が生じた。それは、令和4年度の国内外調査や成果発表のために使用する予定である。
|