2022 Fiscal Year Annual Research Report
自己規定の円環構造に基づく「自我」の究明―カント、フィヒテを中心に―
Project/Area Number |
21K19963
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
尾崎 賛美 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (60905868)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | イマヌエル・カント / ヨハン・ゴットリープ・フィヒテ / 自我論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は「自己規定の円環構造」という枠組みから、カントとフィヒテの自我論の連関を明らかにしつつ包括的に論じることを目的としてきた。2022年度までに、「自己規定の円環構造」を構成する各要素についての研究はすでに行っていた。2022年度はこうした各論をひとつの研究として統合させるべく、この円環構造そのものを根拠づける「原理」を研究テーマとした。具体的には、こうした「原理」という観点から、イェナ期のフィヒテの思想(知識学)において論じられる「絶対我」概念を考察した。報告者がまず注目したのは、「絶対我」が、ひとつには理論的自己規定の〈説明原理〉として、いまひとつには実践的自己規定のための〈理念〉として機能する点である。この点において、「絶対我」を〈フィクショナルな概念〉として解釈する先行研究もある。しかし、こうした〈フィクショナルな原理〉から形成される知識学を、フィヒテは「実在的な思考の体系」とも論じる。そこで報告者は、「知的直観」という概念に着目し、この錯綜した事態に対する整合的な解釈の提示を試み、最終的にはフィクショナルな原理に基づく知識学がいかにして、同時に実在的な体系であり得るのかを明らかにした。 「自己規定の円環構造」という枠組みに基づき、カントとフィヒテとの自我論を包括的に論じるという、当初の目標を達成することができた点が、本研究課題の全体的な成果である。従来より主題的に検討されてきた超越論的原理としての「自我」のみならず、自我と自我ならざるもの(非我)との相互規定的な連関構造として成立する自己規定的事態、さらに理論、実践の両文脈において展開されるこれらの自己規定的事態相互の連関構造に焦点を当て、より広範な文脈からカントとフィヒテを包括的に自我論を論じた点に、本研究課題が独自に有する意義があると評価できる。
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Research Products
(3 results)