2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K19965
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
安田 和弘 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (40905957)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 写真史 / ヴァナキュラー / メディア文化 / アルバム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き、ヴァナキュラー写真に関する先行研究の検討を行うとともに、写真アルバムの歴史的な資料調査を重点的に行なった。 主な先行研究としては、ティナ・カンプやローラ・ウェクスラー、アリエラ・アズレイらの議論である。彼らに共通しているのは、人々の写真アルバムに公的/私的の緊張関係を見出し、そこに政治性を見出そうとしている点であるといえよう。こうした視点を踏まえたうえで、京都大学映画メディア合同研究室 第二回シンポジウムにおいて、「『歴史』に参加する-アジア・太平洋戦争期における写真の位相-」と題した研究発表を行い、アジア・太平洋戦争期に軍人の手によって制作されたアルバムの分析を通して、公/私、記録/記憶の境界線上に位置するメディアだということを示した。具体的には、アジア・太平洋戦争期に陸軍が「満州事變」を記念するというかたちで兵士たちに「絵葉書帖」(アルバム)を 支給していたということ、こうしたアルバムには当局が発行したプロバガンダ絵葉書や戦地で採集した花々や戦友の肖像写真などが、編集者の書き込みとともに収められていることを指摘した。また、兵士たちはそのような絵葉書・写真を収集し、アルバムを制作することによって、戦争に参加する自己を客観的にまなざす視点を得たのではないかという理解を示した。 また、資料調査という点においては、古書市で購入した193o年代に製作された写真アルバムを中心に行った。その結果、おさめられた写真の年代・場所の特定や、アルバム製作者の遺族の方に会うことができ、アルバムが製作された歴史的背景についての聞き取り調査を行うことができた。
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Research Products
(1 results)