2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K19975
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鄭 門鎬 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (90912486)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 白氏文集 / 白居易 / 漢音 / 訓点資料 / 漢籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は日本に現存する『白氏文集』鈔本を調査し、各本に加点されている漢字音注記を数値化し、その傾向を博士家・仏家に大別して分析する計画のもとに研究を進めてきた。 令和3年10月交付以降、博士課程の間に学会発表したが、論文化に至っていない『白氏文集』の漢字音データ・および作成した発表資料を再検討している。加点資料の中には、特に移点本の場合、加点位置により解釈が分かれる可能性もある声点の加点位置を客観的に観察したうえで、判定する作業を要するため、全鈔本を再読し、資料の客観性を高めるための作業に集中している。 現在神田本・時賢本・嘉禎本・正応本・永仁本(被注字数7395字)のデータ入力および検討を終えている。金沢文庫本、管見抄・文集抄・(東洋文庫は調査予定)は現在データ入力および点検を行っている。 なお、漢字音注記の密度は資料によって粗密があるが、『管見抄』および金沢文庫本など膨大な分量を再検討するには時間を要する。『管見抄』の場合は、より高画質の画像が公開されていたため、虫損部分・補修箇所などの判定が不可欠であり、再確認の作業がやや遅延している状況である。現在は対象鈔本9種の加点状況の再検討は7割以上を終えている。昨年度はパンデミックにより、猿投神社および東洋文庫の原本調査の実行は事実上不可能となったため、本年度を目途に行う予定である。 本年度は原本調査の所在地、猿投神社(愛知県)・東洋文庫(東京都)との交渉・調査および分析結果の論文化を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.原本調査が困難 現在コロナウイルスパンデミックにより、当初予定していた猿投神社および東洋文庫の調査のための出張が困難である。 2.資料判読のに多大な時間を要する。 本研究で扱う資料は何種かの資料を除いて、博士課程の間に判読の末に一度は学会発表しているものを含んでいるが、声点の位置が非常に曖昧であり、再検討の余地があった。それを解決するためには、加点箇所を見比べ、客観的な加点位置を判定する必要がある。なお『管見抄』・金沢文庫本などの資料は他の鈔本に比べ豊富な作品を収めているため、再検討の時間を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
1.論文化の準備 令和4年6月初めごろを目途に鈔本における再検討を終え、論文化を進めることとする。 論文化はまず7月を目途に、5種の博士家・仏家鈔本を対象にした漢字音注記に関する内容を計画している(『訓点語と訓点資料』投稿予定)。 第二には仏家鈔本でありながら、清原家の関与が奥書から示されている『管見抄』の漢字音注記に着目したものとする予定である(『日本語の研究』投稿予定)。 2.原本調査 現段階ではコロナウイルスパンデミックにより、調査がやや困難であったが、9月から10月の間に状況の改善が見られるようであるなら、原本調査に着手する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスパンデミックにより、当初調査先に出張が困難になったため
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