2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K19975
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鄭 門鎬 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (90912486)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 白氏文集 / 日本漢字音 / 漢籍訓読資料 / 漢音 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は院政期から南北朝期まで書写・加点された『白氏文集』鈔本の複製本・紙焼き写真などを収集し、当該資料に書き込まれている漢字音注記を対象にして、相互比較を行ったものである。 まず、『白氏文集』資料のうち最も多くが現存する「新楽府」(巻第3・4)写本のうち、書写者が明確である博士家の加点本2種(神田本・時賢本)と僧侶による訓点本3種(永仁本・嘉禎本・正応本)を比較して、主要な言語現象を基準にして、比較を行った(鄭門鎬(2023)「院政・鎌倉時代書写加点『白氏文集』における漢字音の諸問題―博士家・仏家書写「新楽府」鈔本の比較を通じて―」『訓点語と訓点資料』150)。その結果、博士家鈔本はそもそも漢字音注記の数が比較的に少なく、声点・仮名音注の加点は難字・多音字を中心に行われていることが明らかとなった。それに比べて、仏家鈔本は逐字的な加点であり、それに比例して漢字音注記の数が極めて豊富であるが、具体的な加点の事例は加点者により大きな幅が見られた。声点・仮名音注以外の反切・同音字注は鈔本も、加点が任意的にされており、これはそもそも『白氏文集』に有機的な関係性を持つ中国側注釈書が存在しなかったことに起因するものであると考えられる。 また、京都大学所蔵の3種の「新楽府」鈔本を対象にして、学術研究発表を行った。3種の鈔本は1種を除き奥書を書くため、素性が明確ではないが、上記の拙稿(2023)を基に判断すると、仏家鈔本に近い性格の鈔本であることを公表している。 2022年11月30日より同年12月2日まで、斯道文庫(猿投神社蔵本、マイクロフィルムでの調査)・東京都立中央図書館・東洋文庫・東京大学国語研究室にて『白氏文集』諸本(版本・近世写本を含む)の調査を行った。
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Research Products
(2 results)