2022 Fiscal Year Annual Research Report
シュルレアリスム以後のフランス詩における〈口語性〉の研究
Project/Area Number |
21K19977
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 俊吾 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (70909910)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | フランス詩 / ジャン・フォラン / ギュヴィック / リズム / ロシュフォール派 / 口語性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、対象詩人の代表的詩作品の分析と論考を通じて、統一的視座としての「口語性」を獲得することである。前年度に続き、シュルレアリスムの影響圏外のフランス詩人を主な対象としながら研究を行った。今年度は、昨年度3月から研究に着手したジャン・フォラン、そしてギュヴィック、関連するロシュフォール派の詩人を対象とした。 文献収集に関しては、2022年8月中に行い、主に海外の文献調査に力を注いだ。フランス国会図書館を始めとする機関から入手困難な文献を収集することができた。また、韻律・リズム論に関する日本国内の文献は、海外から取り寄せ、論文執筆のための資料とした。 ギュヴィックに関しては、2022年10月22日に開催された日本フランス語フランス文学会で発表を行った。口語的自由詩で詩を書いてきたギュヴィックが、詩的不毛に陥っていた時代にフランスの伝統的な定型詩に回帰した時代の作品の分析を行った。当時のギュヴィックが、既存の形式に当てはめながら、再び生産的に詩が書けるようになるまでの中で、自らの生き生きとした口語的な「声」を取り戻す葛藤があったことを指摘した。 ジャン・フォランについては、論文の執筆が進められ、2023年7月に刊行予定の『抒情詩論集』への掲載が決まっている。論文では、フランスの伝統的な詩に対する考え方を抒情詩/叙事詩の枠組の中で捉えた上で、そのどちらの要素も兼ね備えたジャン・フォランの詩作品の独自性を指摘した。本研究の仮説では、英米圏の詩からの影響があると考えていたが、フォランにはそうした要素は見られなかった。しかしながら、フォランは詩論の中で、自由詩が定型詩と話し言葉の葛藤の中で存在しうるという、エリオットと同じ見解を有しており、自らもそうした詩作に励んでいた。こうしたからも、今後も双方の影響関係は研究していく必要があると考えられる。
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