2022 Fiscal Year Research-status Report
コミュニケーション上で表出される相互行為的機能の日独比較―強調の副詞を中心に
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21K19982
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
中野 英莉子 岡山大学, 教育推進機構, 講師 (60910825)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 言語学 / ドイツ語 / 会話分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではドイツ語を対象とし、人と人との会話の中で語や表現が使用されるときに、語義的意味に加えてどのような相互行為上の機能が表出されているのかを解明することを目的としている。このように本研究では人と人との相互行為(interaction)上での言語使用を分析するため、実際に人と人とが対面して行った会話をデータとして使用する必要がある。人と人との会話をビデオカメラやICレコーダー等で収録したうえで、会話分析の手法を用いてジェスチャーや視線など、コミュニケーション上で起こる様々な非言語要素も含めて分析し、分析対象である語や表現がどのように機能するかを明らかにする。 分析対象は強調の副詞である。分析では、ドイツ語の強調の副詞を日本語の強調の副詞と比較し、さらにドイツ語母語話者の話す日本語会話と日本語母語話者の話すドイツ語会話データの分析も行うことで、両言語間の表出機能とコミュニケーション方法の差異についても論じる。 当該年度では、初年度に購入した機材を使用した会話データの収録を行った。会話データとしては、ドイツ語母語話者同士のドイツ語会話、日本語母語話者同士の日本語会話、ドイツ語母語話者と日本語母語話者間のドイツ語と日本語会話を収録している。さらに、被験者に会話の文字書き起こしを依頼し、収集データのうち約6割分について書き起こしが完了している。この書き起こしデータから、分析対象である強調の副詞を抽出中である。 当該年度に実施したのは以上のように、会話データの収録と書き起こしが主である。研究目的を達成するためには会話データが必須であり、これが不足すると十分な研究結果が得られない。このため、本研究においてデータ収集は重要度が非常に高いと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
データ収集のための機材購入および、日本語母語話者同士の日本語会話データ8本を収録しており、日本語母語話者同士の日本語会話については必要分のすべての収録を終えている。さらに、ドイツ語母語話者同士の会話データが4本と日本語母語話者とドイツ語母語話者の日本語会話およびドイツ語会話データが4本と、必要分の約半数の収録を終えている。また、日本語会話については会話書き起こしが6本分終了しており、ドイツ語会話データについては3本、日本語・ドイツ語会話データについては2本の書き起こしが完了している。これらの会話データを書き起こしたファイルから、分析対象である強調の副詞(とても、sehrなど)を抽出し、分析を開始している。また、分析と考察に必要な書籍の購入を進めている。 以上のように会話収録は進んではいるものの、ドイツ語会話については会話収録に協力可能な被験者の応募が想定していたよりも少なかったため、十分な会話数の収録ができていない。これに伴い、分析にも遅れが生じている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ドイツ語母語話者同士のドイツ語会話データおよび日本語母語話者とドイツ語母語話者の日本語会話およびドイツ語会話データが不足しているため、これらの収集を行うとともに、データの分析を行う。なお不足しているデータ数は、ドイツ語母語話者同士のドイツ語会話3本(3時間分)、ドイツ語母語話者と日本語母語話者間の日本語とドイツ語会話3本(3時間分)である。また既に収集済みの会話データで書き起こしが完了していないもの(日本語母語話者同士の日本語会話2本、ドイツ語母語話者同士のドイツ語会話1本、ドイツ語母語話者と日本語母語話者間の日本語会話およびドイツ語会話データ2本)について、協力可能な方に書き起こしを依頼する。ドイツ語会話収録と会話書き起こしについては、日本に留学中のドイツ語を母語とする学生に協力を依頼する予定である。また、会話の書き起こしの実施と平行して考察対象である強調の副詞の分析を行う。母語話者同士の日本語会話データとドイツ語会話データから抽出した考察対象の分析をすでに開始しているため、引き続き分析を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用が生じた最大の理由としては、ドイツ語会話収録の実施に協力可能な被験者集めに、想定した以上に時間がかかったことが挙げられる。特に母語以外で行う会話については、難度が高いと被験者が感じることが想定でき、これが被験者集めの難しさの原因になっていると言えるであろう。 以上の問題に鑑み、次年度ではドイツ語を履修して一年以上が経過した大学二年生以上の学生や、日本に留学中のドイツ人留学生に積極的に募集を行い、被験者集めに努める。 次年度での予算は主に、会話収録および会話の書き起こしへの謝金支払いと必要文献の購入に充てられる。会話収録を行うのはドイツ語母語話者同士のドイツ語会話が3本とドイツ語母語話者と日本語母語話者間のドイツ語および日本語会話が3本である。合計で12名に会話収録への謝金を支払う。また、会話書き起こしに関しては次年度で収録する6本の会話に加えて、収録済みではあるが書き起こしができていない5本の会話に対する書き起こしに対して謝金が支払われる予定である。その他、データ保存に必要なハードディスクなど物品の購入にも充てられる。
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