2022 Fiscal Year Research-status Report
A syntactic and semantic investigation on the non-restrictive interpretations of numerals form cross-linguistic perspectives
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21K19993
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
於保 淳 小樽商科大学, 言語センター, 准教授 (00909195)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 数詞 / 修飾 / 非制限性 / 強意表現 / フォーカス / 意味論 / 統語論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「非制限修飾する数詞の統一的な分析は可能かどうかを検証すること」である。2022年度は固有名詞・代名詞を修飾する数詞に関して新たな観察が得られ、これに基づいて新たな分析を試みた。 固有名詞・代名詞を修飾する数詞の使用により、排他的な意味が生じることが新たに観察された。具体的には「John1人がケーキを作った」という文では、「Johnのみがケーキを作り、John以外はケーキを作らなかった」という排他的な意味を持つ。 この意味的性質を捉えるために、固有名詞・代名詞を修飾する数詞を強意表現して分析した。この分析は、日本語の「私自身」の「自身」や英語の「John himself」の「-self」など強意の意味を持つ再帰代名詞の分析を応用したものである。特にEckardt (2001)におけるドイツ語の「selvst」の分析を適用し、強意の数詞はidentity functionであり、フォーカスにより同タイプの関数を代替とする代替集合が作られると提案した。これに加え、固有名詞・代名詞を修飾する数詞の文には潜在的な focus particleがあると仮定する。一般的なフォーカスの理論(Rooth 1985)により、排他的な意味が生じ、観察されたパターンが捉えられた。さらに統語的に強意表現は固有名詞の直後にのみ現れることから、固有名詞・代名詞を修飾する数詞の統語的性質をも捉えることができた。また、強意の数詞と「自身」との類似点も観察され、この分析の妥当性を示す結果が得られた。この研究結果は国内学会で報告された。 この分析は、これまで本研究で提案してきた分析とは異なるものであるが、英語の「we three」のような代名詞を修飾する数詞への応用可能性があるため、次年度もこの分析を発展させ、これまでの分析との比較を行いながら、本研究の目的達成に向けて進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
年度途中で異動し、現在の本務校で新たに授業の準備をする必要があったことに加え、前任校での業務の一部を引き続き担当する必要が生じた。その結果、業務の多忙により本研究のための研究時間を確保できず、当初の計画通りに研究ができなかった。その中で新たな観察に基づいた分析を進めることができたものの、本研究課題の進捗状況は遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要に述べた通り、新たな分析の発展と、それとこれまでの分析との比較を進めながら、本研究の目的達成に向けて取り組む予定である。当初の計画では、日本語の固有名詞・代名詞を修飾する数詞の分析を基に、日本語の関係節を伴う名詞を修飾する数詞、そして英語の限定詞直後の数詞の比較を通じて、日本語と英語間、また日本語の2つのケース間で統一的な分析が可能かどうかを検証する予定であった。 しかし、2023年度は新たな分析を中心に据え、日本語の固有名詞・代名詞を修飾する数詞と英語の代名詞を修飾する数詞の比較を主要な課題として研究を進める方向にシフトする計画である。その上で、これまでの分析とも比較を行うことで、本研究が目指す「通言語学的な視点から非制限修飾する数詞に対する統一的な分析の可能性の検証」を達成したいと考えている。
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Causes of Carryover |
現在までの達成度の理由で述べた通り、他の業務が多忙により本研究課題の研究が進まず、本年度に支出を予定していた国際学会および国内学会への参加に伴う旅費、書籍購入費を使用しなかったため、次年度使用額が生じた。今年度は研究を進めるための書籍の購入、学会へ参加費のために使用する計画である。もし学会への参加がかなわない場合は、勤務校の変更に伴い必要になった書籍の追加購入および設備備品の購入に充てる予定である。
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