2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K19997
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Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
荻原 大地 愛知淑徳大学, 文学部, 助教 (60907913)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 近世実録 / 高木折右衛門 / 女武勇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、高木折右衛門を主人公とする作品『武道白石英』に注目し、現存する写本の調査と比較検討を行った。その結果、『武道白石英』は、折右衛門の武勇伝と後継者虎之丞を描くもの(『武道白石英』)、これに虎之丞の武勇伝を描く物語を増補したもの(後編)、前述2つの物語に虎之丞の子の武勇伝を増補したもの(三編)という3種類のバリエーションがあると分かった。『武道白石英』のバリエーションの存在は先行研究では明らかにされておらず、本作品の全体像をより詳細に提示できたものと考える。この考察結果は、『武道白石英』の詳細な梗概と併せて、「高木折右衛門物実録『武道白石英』とその成長」として論文化した。 また、アヘン戦争を題材とした『通俗漢〓(口+英)軍談』を取り上げ、アヘン戦争という大事件を近世実録作者がどのように理解しようと試みたのかを考察した。具体的には、本作が斎藤竹堂『鴉片始末』を素材にした可能性を指摘し、清皇帝とその配下に関する脚色を施すことによって清王朝の敗北を描き出した作品と評価した。以上の考察は「実録写本『通俗漢〓(口+英)軍談』について」として論文化した。本作の存在は今まで知られておらず、新たな資料を提示できたものと考える。 さらに、近世実録の諸本調査の過程で、「女武勇」と題する女性の武勇伝を記した写本群の存在を見出した。これらの写本について、内容の比較検討を進めており、諸本の成立時期や大まかな内容を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り、武勇伝を題材とする実録作品の検討を進められており、いくつかの口頭発表や論文発表を実現できた。進捗状況はおおむね順調である。新型コロナウイルスの影響はあるものの、インターネット上の画像公開や各図書館の複写サービスなどを活用し、研究計画に則った研究を今後も進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は女性の武勇を扱った「女武勇」と題する写本群への考察を進めたい。「女武勇」と題する作品群の存在はあまり知られておらず、近世期において女性のいかなる行為が「武勇」と評価されるのかも明らかではない。当該写本群の考察によって、近世期の武勇観の一端を明らかにできると考えている。あわせて、高木折右衛門物実録が明治期刊本や講談本へと受容されていく実態についても検討していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、原本調査のための調査関連費用を全く支出しなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額と翌年度分の助成金については、今後原本調査が可能になれば調査関連費用として支出する予定である。仮に新型コロナウイルスの状況が好転しなかった場合は、遠方に所蔵される原本の複写代として支出する予定である。
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Research Products
(3 results)