2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K19997
|
Research Institution | Aichi Shukutoku University |
Principal Investigator |
荻原 大地 愛知淑徳大学, 文学部, 助教 (60907913)
|
Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
|
Keywords | 近世実録 / 高木折右衛門 / 女武勇 / 活字翻刻本 / 講談速記本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に考察対象とした『武道白石英』について、明治期の活字翻刻本・講談速記本における受容実態を明らかにした。具体的には、近世実録『武道白石英』が『今古実録 白石英雄記』として刊行され、その本文や挿絵を踏襲した『絵本高木武勇伝』『絵本高木英雄伝』が刊行されたことを明らかにした。また、『今古実録 白石英雄記』の内容を踏まえた講談速記本も複数発見し、その内容は『今古実録 白石英雄記』の細部を改変したものと、主人公の高木折右衛門の怪力無双ぶりを強調したものがあると分かった。近世実録の明治期講談本・講談速記本への展開を具体的に検討した研究は少なく、これらの考察によって、近代日本における近世実録の受容実態を実証的に示すことができると考える。近世実録と明治期講談の具体的な繋がりを指摘できた点も、講談研究に資するものと思われる。 また、前年度に発見した『女武勇集』の「女武勇」についても考察を進めた。その結果、「女武勇」は①行為の主体は武士階級の女性に限定される、②身分の高い女性は心がけ、身分の低い女性は具体的な行動が賞賛されており、身分によって「女武勇」と評価される行為が異なる、③「女武勇」の評価は男性に望まれる行動や心がけを体現した女性を評価するものであるといった特徴が見出せた。「女武勇」は男女の性差や女性間の身分差が複雑に絡まり合った概念であり、近世期の武勇観を示す重要な概念と思われる。この考察は「「女武勇」とその類型―『女武勇集』の一群について―」として論文化した。今後『女武勇集』以外の女性の武勇を扱った作品についても考察を進めていきたい。
|
Research Products
(2 results)