2022 Fiscal Year Research-status Report
コーパス構築による『赤い鳥』の語彙に関する基礎的研究
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21K20001
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Research Institution | Momoyama Gakuin University of Education |
Principal Investigator |
山田 実樹 桃山学院教育大学, 人間教育学部, 講師 (00909038)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 赤い鳥 / 近代語 / コーパス / 語種 / 児童雑誌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1)『赤い鳥』の言語的特徴を実証的に明らかにすること、2)他の近代語資料との対照から、『赤い鳥』の言語資料としての位置づけを明らかにすることを目的とし、『赤い鳥』の童話作品を対象として、[1]『赤い鳥』における語種調査、[2]語種調査のために、童話作品の電子化を行っている。明治から大正、昭和にかけて数多く刊行された児童を読者とする書き言葉資料に関する言語学的な研究はまだ手薄である。本研究では、『赤い鳥』の言語的特徴を明らかにするために、語種調査を行っており、これによって近代語、あるいは児童文学の言語的特徴を明らかにすると共に、著者であり編者でもある鈴木三重吉を中心とした作家たちの、童話作品に対する言語選定意識を明らかにすることにつながる。 令和4年度は、昨年度に続き語種調査のための基礎データ作成に従事すると共に、誤データの修正や体裁を整える作業を行い、第一次語種調査を実施した。具体的には、『赤い鳥』における鈴木三重吉以外の作家の童話66作品を電子データ化した。データ化し、校正済みの作品は、国立国語研究所によって公開されている形態素解析ツール「茶まめ」を使用して、順次形態素解析を行っている。解析結果に問題のある場合には、手作業で修正している。 そうして得られたデータをもとに、語種調査を実施、以下の3点を明らかにし学会発表を行った。1)鈴木作品では、後ろの巻ほど和語が減少、漢語が増加している。2)和語の使用率は他作家の方が高い。3)外来語は使用数は多くないが、衣食住に関する語が多く、表記も揺れている。この結果は、『赤い鳥』が児童雑誌であることや童話作品を調査対象としていることが影響している可能性があるが、現段階では調査対象が限られているため、さらにデータを増やし調査をする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、隣接領域の研究者からの紹介で新たなOCRソフトを知ることができ、作業に従事する人数も増えたことから、電子データ化作業は昨年度に比べてスムーズに進行した。研究成果を第397回日本近代語研究会、ならびに第8回日本人間教育学会で発表することもでき、調査は着実に進んでいる。 しかし、依然として『赤い鳥』紙面上の文字が不鮮明な箇所や段組が複雑な箇所は、OCRソフトを使用した文字化作業が行えず、手作業で入力している部分も多いため、入力作業に計画より時間がかかっている。そのため、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、『赤い鳥』における鈴木三重吉以外の作家の作品の電子データ化を進め、形態素解析・タグ付けを行っていく。本年度はコーパス作成について問題ない範囲で規模を縮小し、語種調査に進み一定の成果を得た。次年度は最終年度であることを鑑み、全体のデータ整理も合わせて行い、成果発表につなげたい。
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Causes of Carryover |
今年度は電子データ化作業に従事する協力者を増員したが、十分に確保できたとは言い難く,当初予定していたより人件費・謝金の支払いが少なかったことが,次年度使用額が生じた主な理由である。 また、本年度もコロナの影響により、学会・研究会等がすべてオンラインで行われ、旅費の支払いがなかったことも挙げられる。 次年度は学会等も対面に戻る予定であり、人件費・謝金、旅費として各々支出される予定である。
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