2022 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21K20002
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
辻村 尚子 大手前大学, 国際日本学部, 准教授 (70908996)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 書簡 / 蕉風俳諧 / 芭蕉 / 蕉門 / 蕪村 / 柿衞文庫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、芭蕉と蕉門俳人の書簡が有する内容・筆跡情報を蕉風俳諧研究に活用するための基盤を整えることにある。今年度ならびに2年間の研究成果は以下の通りである。 今年度は、市立伊丹ミュージアムの開館に伴い、公益財団法人柿衞文庫が所蔵する芭蕉ならびに蕉門俳人書簡の調査に着手することができた。当初予定していた芭蕉と蕉門第一世代の書簡55点を実見し、書誌データを集積した。未紹介書簡については、順次翻字考証を進めている。なかでも、越人書簡について、名古屋市博物館や奥の細道むすびの地記念館、山寺芭蕉記念館等、他機関所蔵の関連資料の調査を踏まえ、筆跡や内容について検討を行い、論文化した。越人晩年の門人と儒学の関わりを明らかにし、従来、初期蕉風に固執した懐古趣味と捉えられてきた越人晩年の俳風が、温故知新の孔子の教えに通じる好ましいものとして門人に受け入れられたことを指摘した。『猿蓑』以降のかるみの俳風に順応しなかった蕉門俳人の芭蕉没後の動向については、従来研究の関心が薄く、蕉風離反者の末路という一面的な評価がなされがちであるが、丁寧に書簡を解読することによって、新たな視点で捉え直すことが可能であることを示した。 未紹介書簡の考証には、ツレとなる関連書簡の情報が有益である。前年度から始めた書簡論文のデータベース作成については、1997年から現在に至る論文282点を追加し、総点数は632点となった。 また、調査の過程で確認した3通の蕪村書簡のうち、柳女・賀瑞宛の2通について「連歌俳諧研究」に報告した。従来活字によって知られていた書簡であるが、原簡の出現により、『蕪村全集』(講談社)の読みの一部を改め、伝来についての情報を加えることができた。残る1通についても、報告の準備を進めている。蕪村書簡については、前年度に報告した1通とあわせ、期間全体を通して4通の成果を得ることができた。
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Research Products
(3 results)