2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K20012
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
白石 將人 三重大学, 人文学部, 准教授 (60869816)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 説文 / 中国語学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、博士論文を元にした著書である『説文文本演変考‐以宋代校訂為中心‐』(『説文解字テキストの歴史的変遷の研究‐宋代における校訂を中心として‐』)を北京の中華書局から刊行した。本著作には、本研究課題の中心内容である、徐カイ『説文解字篆韻譜』に関する基礎的な考察及び、『説文解字篆韻譜』述作の前後の学術的環境に関する研究を含むので、本研究課題にとっても本書の出版は意義あるものであった。 また、徐カイの『説文』学を研究するうえで『説文解字篆韻譜』と共に重要な意味を持つ『説文解字繋伝』のテキストの実態をつかむことが、『説文解字篆韻譜』研究には必要である。従来は、元代に出版された韻書である『古今韻会挙要』が引用している『説文解字』は、徐カイの『説文解字繋伝』のテキストの原初の形態を保存しているものであり、徐カイの『説文』学研究にとって重要な意義があると考えられてきた。しかし、本人の研究によれば、『古今韻会挙要』の編纂者が、自分の文字学に対する意見に符合するような文字解釈を集めてきて、それを『説文解字』の文字解釈として提示している例が多く見られ、また時には『説文解字』の文字解釈を恣意的に改竄している箇所すらあることが明らかとなった。よって、『古今韻会挙要』所引の『説文解字』は、その全てを徐カイの『説文』学を伺う資料として利用することができるわけではないという結論に達した。この研究は、まもなく中国語論文として中国の雑誌に投稿する予定である。 『説文解字篆韻譜』は『説文解字繋伝』と共に、徐カイの『説文』学の一環をなしているので、『説文解字篆韻譜』そのものの研究に取り組む前段階として、その前後の状況や、『説文解字繋伝』のテキストに関する研究を発表ないし実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
二年度しかないので、研究実績の概要を再録する。 昨年度は、博士論文を元にした著書である『説文文本演変考‐以宋代校訂為中心‐』(『説文解字テキストの歴史的変遷の研究‐宋代における校訂を中心として‐』)を北京の中華書局から刊行した。本著作には、本研究課題の中心内容である、徐カイ『説文解字篆韻譜』に関する基礎的な考察及び、『説文解字篆韻譜』述作の前後の学術的環境に関する研究を含むので、本研究課題にとっても本書の出版は意義あるものであった。 また、徐カイの『説文』学を研究するうえで『説文解字篆韻譜』と共に重要な意味を持つ『説文解字繋伝』のテキストの実態をつかむことが、『説文解字篆韻譜』研究には必要である。従来は、元代に出版された韻書である『古今韻会挙要』が引用している『説文解字』は、徐カイの『説文解字繋伝』のテキストの原初の形態を保存しているものであり、徐カイの『説文』学研究にとって重要な意義があると考えられてきた。しかし、本人の研究によれば、『古今韻会挙要』の編纂者が、自分の文字学に対する意見に符合するような文字解釈を集めてきて、それを『説文解字』の文字解釈として提示している例が多く見られ、また時には『説文解字』の文字解釈を恣意的に改竄している箇所すらあることが明らかとなった。よって、『古今韻会挙要』所引の『説文解字』は、その全てを徐カイの『説文』学を伺う資料として利用することができるわけではないという結論に達した。この研究は、まもなく中国語論文として中国の雑誌に投稿する予定である。 『説文解字篆韻譜』は『説文解字繋伝』と共に、徐カイの『説文』学の一環をなしているので、『説文解字篆韻譜』そのものの研究に取り組む前段階として、その前後の状況や、『説文解字繋伝』のテキストに関する研究を発表ないし実施した。 コロナのため、海外における版本の実地調査などができないので、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、『説文解字篆韻譜』の内、より古い形態を保っていると考えられる十巻本の書誌的な研究に取り組みたい。『説文解字篆韻譜』には十巻本と五巻本が存在するが、五巻本が元代以来、中国における足取りがたどれるのに対して、十巻本は清初に突然発見され、現在までの通説では、清初に日本から渡来したと考えられている。しかし、本人の研究によれば、明代以来の足取りを中国国内においてたどることができるので、日本から渡来したものではなく、中国国内でずっと伝承されてきたものと考えられる。この見解に関する考察をより深めて、説得的な根拠を与え、論文として発表したいと考えている。 また、元々の計画では、中国大陸や台湾に版本の調査に行く予定であったが、現在の状況に鑑み、困難な可能性が高いため、研究計画を変更して、日本国内でできる調査並びに研究に重点を置く可能性がある。国外で版本調査をするのに代えて、『説文解字篆韻譜』の音注を研究する基礎的な作業として、『説文解字繋伝』の音注を研究したいと思っている。『説文解字繋伝』の音注に関しては、昨年度刊行した『説文文本演変考‐以宋代校訂為中心‐』(『説文解字テキストの歴史的変遷の研究‐宋代における校訂を中心として‐』)において、いくつかの新知見を見いだしたので、それにもとづいて、従来の研究とは違った観点から音注を再検討することは、意味ある研究成果を挙げられるものと確信している。
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Causes of Carryover |
(理由):コロナのため、中国大陸及び台湾の各地域に行くことができないので、現地での版本調査が不可能であった。
(使用計画):コロナの全般的状況が好転した後に現地調査するのに使用する。また、研究の進行および研究の成果発表に使用する。
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