2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploratory Research on How to Tell a "Narrative" in Casual Conversations Aimed for a Multicultural Symbiotic Society
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21K20025
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
張 未未 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 助手 (60906709)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 日本語母語場面 / 日中接触場面 / 物語の類型 / 物語の評価 / 談話標識 / 雑談教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、日本語母語場面と日中接触場面の雑談における、日本語母語話者と日本語学習者による物語の類型、構造、表現について分析を進めた。 <物語の類型>内容や相互行為の観点から、物語の基本類型を見出し、場面・話者別の雑談における各類型の物語の出現傾向を明らかにした。その中で、過去の出来事について語る「体験型」物語と、未来や仮定の出来事を語る「虚構型」物語との、構築方法や対人的効果の相違について実際の談話データに基づいて観察し、その結果をまとめて『学術研究(人文科学・社会科学編)』(70)に投稿し、掲載された。 <物語の構造>雑談における物語のうち、大事とされる物語に対する意見や感想を表す「評価」にどのようなバリエーションが見られるのかについて、その表現効果によって下位分類をし、場面・話者別に分析を行った。また、それぞれの下位項目の形成方法を相互行為の観点から分析し、物語全体に占める割合を算出した。場面・話者別の物語の「評価」方法については、次年度以降、論文としてまとめる予定である。 <物語の表現>周辺的言語要素に着目し、場面・話者別の雑談の物語開始における談話標識(間投詞、接続詞、文副詞等)の出現傾向を、物語の開始方法(語り手自身が開始する「自発」と、相手の質問によって開始する「他発」)別に分析した。また、談話標識の使用順を物語を開始する際の心的手続き(具体的にイメージを浮かべてから談話に導入するという手続きを経る言語産出 )に基づいて明らかにした。その中の、日本母語場面における日本語母語話者による談話標識の使用傾向に関する研究成果を、『日本語の研究』18(2)に投稿し、採択された。今後、物語のクライマックス・評価の述べ方についても分析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大の影響によりインタビュー調査は叶わなかったが、本年度の主な目的である、日本語母語場面と日中接触場面の雑談における、日本語母語話者と日本語学習者による物語の類型、構造、表現についての談話分析は、計画通り順調に進められてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスの感染状況次第ではオンラインでの調査の可能性もあるが、対面でのインタビューを実施し、第三者としての日本語母語話者や日本語学習者による、物語に対する意識や評価から、主に接触場面の雑談における物語の語り方について検討する。談話分析とインタビュー調査の結果を踏まえて、多文化共生社会の実現に向けた、日本語の雑談教育の一環としての物語の指導方法を提案する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、参加する予定だった学会がオンラインでの開催となり、旅費が不要になった。また、予定していたインタビュー調査は、同様な理由で叶わなかったため、人件費・謝金の支出が少なくなり、次年度使用額が生じた。
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