2022 Fiscal Year Research-status Report
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21K20026
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
佐藤 園子 早稲田大学, 人間科学学術院, 助教 (80907139)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 20世紀フランス詩 / 移動 / 場所 / 自然 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、20世紀フランス詩において多様化する土地の(移動を含む)経験が、いかに「詩的に住まう」ことの意味を重層化しているのか、また、詩の中で実践される「詩的に住まう」態度が言葉と取り結ぶ関係とはどのようなものか、という問いを核とし、ジュール・シュペルヴィエル研究に端を発する問題意識を、フランス現代詩におけるエコポエティック研究へと接続することで、広くフランス現代詩研究の分野に貢献することを目的とする。 今年度は、科学研究費助成事業補助事業期間延長申請を行い、令和4年6月18日から令和5年3月31日までの期間研究を中断した。そのため、「研究実施計画」のうち、フランス語圏を中心に、エコポエティックに関する研究の現状と、焦点を当てる作家(ジュール・シュペルヴィエル、ギュヴィック、ジャン・フォラン、シルヴィア・バロン・シュペルヴィエル)についての研究論文の調査を集中的に行なった。 文献調査を進める中で、特に(1)土地と詩的空間(3)土地の所有と言語借用に関して、主にジュール・シュペルヴィエル作品とシルヴィア・バロン・シュペルヴィエル作品に見られる海の表象を巡る検討を通して、今後の研究を展開する上での重要な視座を得た。場所の感覚に根ざしたエコポエティックは、ある土地に詩的に「住まう」ことの言語的関わりを問うものだが、海は人間が住まうことのできない領域として存在する。住まうことができないため、所有することも当然不可能である。一方で、エコポエティックのトポスにはなり得ない「海」に「住まう」少女を主人公に据えるのが、ジュール・シュペルヴィエルの短編小説『海に住まう少女』(L’enfant de la haute mer)である。忘却、死と再生の象徴としての海と、移動の場所としての海がいかに詩世界の中で二重化されているかを検討することを、今後の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3ヶ月弱の限られた研究期間であったが、文献調査が順調に進んだため、このように判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実施計画を提出する段階では考えていなかったが、詩における土地や場所の経験と、それに結びついた記憶と忘却についての考察を深める。ジュール・シュペルヴィエルの詩において、忘却、死と再生の象徴としての海と、移動の場所としての海がいかに詩世界の中で二重化されているか検討することを、今後の課題としたい。また、研究実施計画のうち特に(1)土地と詩的空間(3)土地の所有と言語借用に関して、主にジュール・シュペルヴィエル作品とシルヴィア・バロン・シュペルヴィエル作品に見られる海の表象を考察する。
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Causes of Carryover |
産前産後の休暇、育児休業の取得又は海外における研究滞在等に伴い、1年間研究を中断し、補助事業期間を延長したため。
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