2022 Fiscal Year Research-status Report
音声学習モデル・類似性仮説の再解釈:日本語特殊モーラの習得から
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21K20029
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
金 佳 関西大学, 外国語学部, 准教授 (40909727)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 特殊モーラ / 音声学習モデル / 類似性仮説 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(1)中国語を母語とする学習者における超分節音の日本語特殊モーラ(長音、促音、撥音)の習得状況から、音声学習モデル(SLM)・類似性仮説 (SDRH)の射程範囲をテストする;(2)特殊モーラごとの習得状況を把握することによって、学習者における超分節音の習得要因を分析し、習得されていく過程に応じたカリキュラムの編成への提言を目指している。 これまで、上記の2つのモデルはいずれも主に分節音レベルで検証されてきたが、本研究の場合、特殊モーラを考察対象としているため、超分節音というより大きな単位で音声・音韻の習得理論の射程範囲を検討することによって、理論の再解釈を追求する。本研究では、2つのモデルを互いに排他的なものとせず、SLMに欠けている「学習者における変容」とSDRHで示すことができなかった「新規音声のパフォーマンスが類似音声を上回れる」を補完した上で検証を行なっている。そして、3種類の特殊モーラ間の習得順序、及びそれぞれの特殊モーラの発達という立場から、特殊モーラ習得の全体像の一部も描いていくことで、日本語学習者のための音声教育指針への提言に寄与することが期待される。これまでは、研究方針の確定および日本語学習者コーパスにおけるデータ収集を行った。また、対面での調査が難しかったため、日本語学習者コーパスを使用して、ある程度レベルごとに学習者の発音傾向を整理することはできた。ただし、当初予定していた対面での音声データの収集は、新型コロナウイルス感染症の影響で難航していた。オンラインでも実施できる、知覚実験および母語話者評価を中心とした研究手法へのシフトも試みたが、音質や実験環境の統制うまくできなかった。2023年度は対面の調査と実験が実施できるようになったため、当初の計画でデータ収集を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の影響のため、海外への渡航および日本国内での移動が難しく、予定していた対面での音声収集や母語話者評価データの収集が行えなかった。日本語学習者コーパスにおけるデータを利用して学習者のパフォーマンスを整理したが、まだ不十分であり、2023年度は対面の調査と実験が実施できるようになったため、当初の計画のとおり対面でデータ収集を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、日本語学習者コーパスだけではなく、音声知覚実験および音声産出調査を対面で実施する予定である。新型コロナウイルス感染症の影響がまだ続くため、コロナ対策を講じつつ、あらゆる調査可能な方法を検討し、順次調査を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
当初は、知覚実験および音声調査を実施するための旅費、人件費等を出費する予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響により、海外や日本国内で対面での調査は予定通りに進めることができなかった。そのため、次年度使用額が生じることとなった。2023年度は、対面の調査・実験を再開して、コロナ対策を講じつつオフラインで実施していく予定である。
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