2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K20032
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Research Institution | Ichinoseki National College of Technology |
Principal Investigator |
渡邉 美希 一関工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (50910212)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 『枕草子』 / 近世注釈 / 岩崎美隆 / 加納諸平 / 尾崎正明 / 和学者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近世後期の和学者である岩崎美隆の『枕草子』注釈活動を明らかにすることを目的とする。すでに翻刻・刊行されている美隆の『枕草子』注釈である『杠園抄』『枕草子私記』に加え、これまで注目されてこなかった美隆による他の『枕草子』注釈や、美隆旧蔵の、美隆の周囲の人々による『枕草子』注釈、美隆の詠草や和文集などを幅広く調査することで、美隆の『枕草子』注釈活動の全体像を明らかにするものである。 2021年度は、関西大学図書館岩崎美隆文庫に所蔵される美隆自筆稿本の調査に加えて、天理大学附属天理図書館で美隆の師である加納諸平の諸資料を調査する機会を得た。さらに、大阪府立中之島図書館での調査を行い、美隆の門弟であった中西多豆伎や荒木美蔭らの関係資料を調査した。加えて中之島図書館では未翻刻の岩崎美隆書簡を閲覧することができた。これらの調査によって、美隆が属していた文化圏を把握し、美隆が『枕草子』を中心として彼らと交流を持ったという側面があったことを把握することができた。 また、調査の成果を踏まえ10月に口頭発表を行った。発表によって、美隆の『枕草子』注釈活動が師諸平や尾崎正明らとの交流によって深められていたことを明らかにした。さらに、美隆が属していた文化圏についての考察の際に歴史学的手法を用いる重要性についても再認識し、今後の研究計画の再考についても有意義であった。 また、美隆と近い時期に成立した伴直方『枕冊子考』について考察を進める他、その他の『枕草子』関連資料の調査を進めることで、近世『枕草子』注釈史における美隆の注釈活動の意義について考察を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの染拡大の影響に伴い、いくつかの調査を中止・延期せざるを得なかった。 幸い11月~2022年1月あたりまでは調査が可能になったが、調査の中止・延期に伴って翻刻が進んでいない資料が複数残されている。その結果、研究成果の論文化などに若干の遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に得られた資料のうち、未翻刻の資料の読解をまずは終える。特に岩崎美隆自筆書簡については早急に内容把握に努める。 また、昨年度の調査では不足している諸資料について、中之島図書館を中心に再度調査する。 以上の資料調査を踏まえ、美隆の属していた文化圏をより精緻に把握することに努める。そして、彼らの交流のきっかけが『枕草子』注釈であったことを明らかにし、彼らの文化圏で『枕草子』がどのように読まれたのかを明らかにしていく。その上で、美隆の『枕草子』注釈活動の背景だけでなく、注釈の特質についても考察を深め、近世後期『枕草子』注釈史上のおける岩崎美隆『枕草子』注釈活動の位置づけを明らかにする。
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Causes of Carryover |
天理大学附属天理図書館での調査後文献複写依頼を出したものの、図書館での機材故障により納入が翌年度(2022年度)に繰り越されたため。また、新型コロナウィルスの感染拡大により調査先が制限されたため。
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