2022 Fiscal Year Annual Research Report
文明形成期におけるアンデス・アマゾン間の相互交流:ワヤガ・ウカヤリ川流域の事例
Project/Area Number |
21K20038
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
金崎 由布子 東京大学, 総合研究博物館, 助教 (10908297)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | アンデス考古学 / アマゾン考古学 / 地域間交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、2021年度に、現地の研究協力者と連携してペルー共和国ワヌコ州の遺跡分布調査を行った。その結果、先行調査において集中的な遺跡分布が確認されているワヌコ市近郊(標高2000m程度)だけでなく、これまでアンデス文明形成期の遺跡が見つかっていなかったワヌコ北西部の高標高地域や、標高1000mを下回る熱帯雲霧林地域においても遺跡が発見された。 そこで2022年度には、アンデス・アマゾン間の相互交流を理解する上で特に重要と考えられる、ワヤガ川支流モンソン川流域の熱帯雲霧林地域に位置するチャウピヤク遺跡の発掘調査を実施した。 チャウピヤク遺跡は、モンソン川支流のチャウピヤク川およびリモンコチャ川の合流点を見下ろす山の尾根に造られた遺跡である。発掘調査から、当遺跡は少なくとも三段の段を持つ基壇建築であり、基壇の上には円形および方形半地下式広場や、部屋状構造物が建設されていたことが明らかになった。また、当遺跡には大きく分けて2つの時期があった。最初の時期に円形・方形広場や部屋状構造物が建設された。次の時期になると、円形広場が埋められたほか、部屋状構造物が低い基壇へと作り替えられた。 これらの2つの時期では、共伴する土器の特徴も異なっていた。最初の時期には、中央アンデスに広く分布する無文の無頸壺と、階段文様などを持つ鉢類が出土した。次の時期になると、近隣の標高2000~4000mの山間地域に分布するサハラパタクスタイルと呼ばれる土器が出現するが、これは標高500m以下の熱帯低地と共通するスタイルの土器と共伴していた。このことは、この地域がアンデスとアマゾンの双方との交流関係を持っていたことを強く示唆するものであった。
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