2022 Fiscal Year Annual Research Report
弥生・古墳時代移行期における東日本への集団移住に関する考古学的研究
Project/Area Number |
21K20039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山下 優介 東京大学, キャンパス計画室, 助教 (90909615)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 弥生時代 / 古墳時代 / 南関東地方 / 近江系土器 / 東海系土器 / 移住 / レプリカ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、弥生時代から古墳時代への移行期に生じた、遠隔地への土器の移動や墳墓形態の共有といった、広域に及ぶ現象を引き起こした要因の一つが集団の移住行為であることを証明し、大規模な移住活動が古墳時代の社会変化を引き起こした、という仮説の検証を目的としている。目的達成のため、第一に集団移住の認定基準を定め、第二に移住の根拠となる考古事象の集成・分析、そして第三に、分析結果に基づく大規模な移住の有無を判断し社会変化の背景を明らかにするという3段階の実施計画に沿って研究を進めた。令和4年度には、実施計画の第二・第三を中心に取り組んだ。 本年度はまず、前年度から継続して関東地方1都6県の遺跡から出土した「近江系土器」や「東海系土器」の集成作業を実施した。作業にあたっては業務従事者を雇用し、遺跡の所在地・出土遺構・器種・量・時期といった基礎的情報を網羅した一覧表の作成を進めた。土器の集成作業に並行して、上記の土器が出土した遺跡や周辺遺跡を対象に墳墓(前方後方墳や前方後方形の周溝墓)および建物(独立棟持柱建物・布堀掘立柱建物・周溝付建物等)の集成を実施した。 次に、集成した土器の一部を対象に東京大学埋蔵文化財調査室等で観察調査をおこなった。東京大学埋蔵文化財調査室の所蔵土器資料に関しては、遠隔地からの搬入品であるかを検討するため、土器胎土の分析を実施した。また、移住者の痕跡の一つとしてとらえた食文化の差異を明らかにするため、東京都文京区の遺跡出土土器を対象としたレプリカ法による土器の圧痕分析や、関東地方の遺跡出土炭化ムギ類種実の集成研究を通じて東京湾岸地域における当該期の穀物利用の状況を検討した。 最後に、他地域に系譜をもつ土器および土器が出土した遺跡における墳墓や建物といった他要素の検討をふまえて、研究実施計画の第三である研究の総括をおこなった。
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