2021 Fiscal Year Research-status Report
五代十国期における国際関係の分析――十国側史料所収の外交関連文書を中心に
Project/Area Number |
21K20043
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新見 まどか 大阪大学, 人文学研究科, 招へい研究員 (40759958)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 中国史 / 五代十国 / 国際関係 / 外交文書 / 藩鎮 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、五代十国期の国際関係について、外交に関連する国書や上奏文の精読に基づいて分析することを課題としている。1年目である今年度は、①史料の収集、②史料の読解、を中心的に行う予定であった。実際に行ったのは、所謂五代王朝の内、最初の三王朝、すなわち後梁・後唐・後晋期の国書及び辺境官府間でやり取りされた文書、使者の手紙の収集と精読である。その成果の一部は、2022年11月に開催された唐代史研究会(zoomオンライン開催)にて「大梁皇帝と大蜀皇帝――『錦里耆旧伝』所収、後梁・前蜀間国書考」と題して発表を行っており、今年度中に論文として公刊予定である。この作業によって、当時の国際関係が意外に大きな柔軟性を有していたのではないか、との研究の見通しを得ることができた。現在はその認識に基づき、後晋・南唐・後蜀間の外交関係の分析を進めており、5月と6月にはその内容を研究会等で発表することも予定している。 また、国際関係を議論する前提として、後梁の国内統治のあり方や興亡の過程、さらには後梁に続く後唐建国の背景について、別途分析する必要が生じた。そのため、視野を外交関連文書以外にも広げ、石刻史料や国内向けの詔勅、仏教僧侶の伝記などを用いて、後梁から後唐期までの諸勢力の関係を整理した。その結果、河北の半独立的な藩鎮勢力が後梁の滅亡や後唐の建国に際して大きな影響を与えたことが明らかとなった。この成果は、独立した「国家」でも純然たる「臣下」でもない半独立勢力の、国際関係上の重要性を示す成果であり、当時の外交の実態に迫るという本研究の趣旨に鑑みても重要となる。こちらも、今年度中の論文化を予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、本来五代期全体についての外交関連文書を考察する予定であった。ところが作業の過程で、当時の外交関係の解明にあたっては、五代・十国に数えられる王朝だけではなく、半独立的な政治勢力、特に河北の藩鎮に対する分析を行う必要があることが判明した。そのため、作業予定を一部変更のうえ、特に後梁・後唐と河北藩鎮との関係を考察する作業を行った。その結果、五代のうち後周期については、本格的な史料の読解にまで至ることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず昨年度作業したものの論文としてまとめ終わっていない後晋・南唐・後蜀間の外交関係について、論文化する作業を最優先に行う。そのうえで、残された外交文書の精読と分析も進める。具体的には、後唐と前蜀、後周と南唐それぞれについての分析を予定している。一連の作業が完了すれば、後梁から後周まで、五代期を通観した国際関係の在り方とその変遷が明らかとなり、本研究の目的を達成できるであろう。 なお、当初の予定では今年度に中国での海外調査を予定していた。しかし、現時点の情報では実現が困難との見通しである。この問題については、インターネットなどを介して日本で閲覧できる史料を利用することである程度の対応は可能と考えている。また、海外調査及びその準備に割く時間を使って、代わりに研究成果を著書等の形で公開することに向けて作業を行うことを検討している。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りの予算を執行したが、コロナ禍により対面での学会参加無かったため、旅費の執行が無く、次年度への繰越金;92,950円が発生した。繰越金については、次年度の物品費、及び旅費で執行予定。
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Research Products
(4 results)