2021 Fiscal Year Research-status Report
高麗陶器からみた中世東アジアの交流の解明に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
21K20046
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
主税 英徳 琉球大学, 国際地域創造学部, 講師 (60910510)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 陶器 / 高麗 / 編年 / 器種分類 / 窯 / 生産・流通 / 日麗関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
高麗陶器は、朝鮮半島だけではなく、日本や琉球列島でも出土が確認でき、さらにはカムィヤキ(類須恵器)生産との関係性も指摘されるなど、高麗・日本・琉球の関係を探ることができる考古資料の一つとして注目される。しかし、高麗陶器は、日常雑器として扱われることが多く、同時代の他の物質資料に比べると、学問的関心が高いとはいえない状況である。そこで、本研究では、①高麗陶器関係資料の収集と把握、②器種や編年の整備・構築、③高麗陶器の生産と日韓における流通の解明という大きく3つを目的として、高麗陶器の基礎的研究として位置づける。 目的①については、日韓の遺跡から出土した高麗陶器の資料の把握を行った。韓国側出土資料は、韓国文化財庁を中心としたWebサイトを活用して、発掘調査報告書を中心とした文献収集を行った。その結果、高麗陶器窯跡関係の発掘調査資料は、ほぼ網羅できたものと考えられる。日本側出土資料は、これまでに収集した文献資料の再整理を行った。同時に、沖縄本島を中心として、新資料の把握も試行し、一部の遺跡より高麗陶器の可能性がある資料を見つけることができた。現在、日韓出土資料からみた胎土の特徴や、カムィヤキ(類須恵器)との比較検討を通して高麗陶器として認定できるか検討している。②については、①で収集した資料をもとに、報告書記載情報から遺物の状態や出土状況などをデータ化し、分析検討に備えている。③については、①と②の成果をもとに、高麗時代全体で通時的に窯が発見されている地域を設定できそうであり、今後、窯周辺の消費遺跡の出土遺物と比較検討することで、生産と流通の解明を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症まん延のため、国内はもとより、韓国にも資料の実見調査に行くことができなかったためである。特に沖縄地域は、他県に比べ、感染状況がなかなか落ち着かず、県外にも行くタイミングを逸ししまったことも大きい。そのため、日韓における高麗出土遺跡の発掘調査報告書を中心とした資料の収集は、比較的順調に進展しているが、実見調査による考古学的情報の確認や把握まで及んでいない。 ただし、そのようななか、沖縄本島資料を調査するなかで、高麗陶器の胎土の特徴に関する比較検討を行い、発表することができたことは成果の一つとして挙げることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
目的①高麗陶器関係資料の収集と把握については、発掘調査報告書を中心とした文献を継続して入手していく。なお、韓国への調査は、新型コロナウィルス感染症の状況を鑑みながら、機会があれば、極力行くことにしたい。しかし、本研究期間内での渡韓が難しいことも想定し、韓国人研究者との連絡などを通して、調査や研究に関する最新の情報収集に努めることとする。国内では、高麗陶器が出土遺跡を中心に、資料の実見調査を実施していく。また、沖縄本島を中心とした新資料の発見についても継続的に実施していく。 目的②器種や編年の整備・構築については、①で収集したデータをもとに、例えば、完形資料を中心とした器種分類などを行うなど、より客観性のある基準の提示といった視野から分析を行い、今後の研究の基礎となるようにしたい。 目的③高麗陶器の生産と日韓における流通の解明は、通時的な生産を確認できる地域を対象として、窯周辺遺跡から出土する高麗陶器との比較検討を行っていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症のまん延により、打合せや調査等に行く機会を逸してしまった。また、旅費の約80%を占める韓国渡航もできず、予定どおりに旅費を執行することができなかった。これに連動し、当初予定していた調査成果整理支援のための人件費・謝金の執行も不可能であった。 2022年度は、当初の計画どおり、資料分析を円滑に進めるための物品を購入するともに、報告書作成とその印刷も行う。旅費については、新型コロナウィルス感染状況を鑑みながら、国内での打合せや調査などに重点を置きつつ、状況みながら、韓国にも行くことも検討したい。
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