2022 Fiscal Year Research-status Report
高麗陶器からみた中世東アジアの交流の解明に向けた基礎的研究
Project/Area Number |
21K20046
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
主税 英徳 琉球大学, 国際地域創造学部, 講師 (60910510)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 高麗陶器 / 器種分類 / 器種構成 / 生産 / 窯構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、①高麗陶器関係資料の収集と把握、②器種や編年の構築、③高麗陶器の生産と日韓における流通の解明である。 目的①について、当該年度においても、新型コロナウイルス感染症の影響があり、韓国での資料調査は難しい状況にあった。そのため、昨年度に引き続き、高麗陶器に関する基礎資料について、インターネットを駆使して収集を図った。先行研究の成果を参考にしながら、韓国文化庁の報告書に関するサイトの利用や韓国の知人にお願いするなどして、発掘調査報告書のPDFを中心とした資料収集を行うことができた。 目的②について、目的①で蓄積した資料をもとに、器種分類に関する分析を行い、器種構成の時期ごとの変遷を把握することができた。器種設定にあたっては、全体のプロポーションに重点をおきつつ、広く様々な破片資料にも適用できるように口縁部形態からもある程度把握できることに留意した。器種構成の変遷については、一定程度の一括性をもつ窯跡出土資料を対象に分析した結果、長期的に生産される器種、消滅する器種、新たな出現する器種などを把握することができた。 目的③について、生産において、地域性がある可能性を考慮し、まずは楊広道地域のものに対象を限定し、窯構造に対して分析を行い、生産様相の一端を明らかにできた。これまでの先行研究では、高麗陶器の窯構造はあまり変化がないといわれていた。しかし、生産した大型壺の編年にもとづき、時間性に伴う窯構造を捉えることにより、変化があることを把握できた。すなわち、12世紀頃に、高麗陶器窯の特徴というべき、構造的な変化があることもわかった。また、流通について、韓国に行くことはできなかったものの、国内における高麗陶器や比較資料としての中世日本における関係資料などの実見資料を実施した。結果、日本において新たに高麗陶器出土資料を確認することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染症の影響のため、韓国での実見調査や資料調査が実施できなかったためである。そのため、流通に関する分析が進んでいない。 ただし、これまでの資料収集の成果をもとにした、器種分類や器種構成の変遷、窯構造の変化からみた生産様相などについて分析することができ、論文として発表できたことは成果として挙げることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
目的①高麗陶器関係資料の収集と把握については、発掘調査報告書や関係文献などを継続して入手していく。新型コロナウイルスが以前よりおさまってきていることもあり、韓国での資料の実見調査や関係資料の収集などを実施していく。関係資料の収集にあたって、インターネット上で入手できないものもあり、それらについては韓国の図書館や大学などの機関などを利用していく。 目的②器種や編年の構築については、2022年度は、生産遺跡である窯跡出土資料を対象に生産面から把握した。今後は消費遺跡も対象に加えながら、さらなる検討を進めていく。 目的③高麗陶器の生産と日韓における流通の解明についてである。まず、生産に関して、今後は楊広道地域以外の状況を把握することで高麗時代に陶器生産をより広く理解したい。流通に関して、目的①と関連させ、韓国での実見調査を通して、窯と消費遺跡における出土資料の関係を探っていく。また、継続して、日本国内での出土事例の把握も行っていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症まん延のため、調査や打合せなどに赴く機会をなかなかつくることができなかったためである。これに伴い、旅費や資料整理に伴う人件費などの執行ができなかった。 新型コロナウイルス感染症が落ち着き見せはじめた昨今、韓国をはじめ、日本国内も対象として、実見調査や資料収集、研究打合せなどを実施する予定である。
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