2021 Fiscal Year Research-status Report
1940~50年代における中国農村の経済構造に関する研究――中国東北地方を事例に
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21K20047
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菅野 智博 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 准教授 (60827814)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 中国東北地方 / 農村経済 / 農家経営 / 土地改革 / 農業集団化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、1940年代末から1950年代初頭までの中国東北地方における農家経営を検討することを通じて、同時期の中国農村経済の特徴と変容を解明するものである。具体的にいえば、中国共産党によって実施された諸政策、特に中国の農村社会に大きなインパクトを与えた土地改革や農業集団化運動に着目し、これらの政策が農村経済にもたらした変化を分析するとともに、当該時期の農村社会の特徴を考察するものである。以下では2021年度の研究実績を史料整理・収集と成果発表の2点に分けて説明する。 まず史料整理・収集についてである。本研究の主要な史料は、従来の研究でほとんど利用されなかった中国東北地方の地方新聞である。これらの史料には、中国共産党の政策に加えて、個別村落に関する詳細な記事が多く掲載されており、地域に根差した視点から農村社会の状況を検討することができる。申請者は、これまで数年間にわたり、中国国家図書館や各地の地方図書館において関連地方新聞の一部を収集してきた。これらの新聞を利用するためには、新聞全体の状況や論調を把握する必要があり、2021年度はその整理に時間を費やした。具体的には、既に収集した地方新聞の記事目録を作成し、さらに記事をテーマごとに分類したり、県や村落ごとに分類したりして、土地改革の展開や農村社会の状況などの理解に努めた。また、日本国内での史料収集も積極的に行った。滋賀大学に所蔵されている満洲引揚げ関連史料群は、1945年以降の中国東北地方の状況や敗戦直後日本人の生活状況を知る上で極めて重要なものであり、今後も継続して調査していきたい。 次に成果発表についてである。2021年度は研究を進捗に合わせて、三田史学会と中国都市芸能研究会において研究報告を行った。そして、報告に対して多くの有意義なコメントを頂いた。今後はこれらをもとに学術論文の執筆する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は中国での現地調査を期待していたが、新型コロナウイルスの感染により実現に至らなかった。したがって、2021年度は研究環境と研究体制の確立を目指しつつ、これまで収集してきた史料の整理に多くの時間を割いた。そして、これらの作業を通じて、次年度以降の研究の本格的展開に向けての準備が一定程度できたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も現地調査が困難と予想される中、既に収集した史料の整理を継続していく必要がある。そして、これらの史料を土台に分析し、その上で不足する文献史料を将来的に現地で収集することで分析の質をさらに高められる。また、文献史料から十分に理解できない村落社会の実態については、直接現地に赴いて老幹部や農民を対象とした口述調査を行い、村落社会をより立体的に描き出すことを目指す。2022年度は、その準備段階として史料整理を継続していきながら、分析にも力を入れて研究を進めていきたい。
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Research Products
(7 results)