2021 Fiscal Year Research-status Report
オランダ植民地期末期のインドネシアにおけるイスラーム運動とマス・マンスール
Project/Area Number |
21K20053
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
土佐林 慶太 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (10905764)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | インドネシア / マンスール / 東南アジア / 連帯 / イスラーム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、オランダ植民地期末期のインドネシア(1942年まではオランダ領東インド)におけるイスラーム運動、特にムスリムによる大同団結運動に着目し、その活動や思想形成が独立後のインドネシア社会にいかなる影響を与えたのかを考察するものである。具体的には、以下2点の課題に取り組むことにより、本研究の実現を図る。すなわち、①オランダ植民地期末期に、インドネシア・ムスリムの団結運動を主導したマス・マンスールの活動経歴と思想的特徴の分析、②植民地期末期のイスラームとナショナリズムを接合させる活動の分析である。 2021年度は、前年度より続く世界的な新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大の影響により、国内外の図書館・文書館での資料調査を行うことができなかった。そのため、研究環境の整備と前者の検討課題(①)について、手元にあるマンスール自身が執筆した論考や演説記事から、彼の思想に関する分析を進めた。また、これまで注目されてこなかったムハマディヤ参加以前のマンスールの活動を時代順に整理し、それぞれの活動の目的、思想、中心メンバーを探った。これらの活動に関わっていた人物は、後の団結運動の主要人物と共通する点も多い。マンスールがいかにして団結運動を先導する人物になり得たかを検討する上で、前時代の活動で得た人的・地域的な結びつきは非常に大きな意味があったと考えられる。 現在は、これらの問題を扱った論文の執筆に取り組んでいる。今後実施予定の資料調査によって、不足する資料を補い、論文として完成させることが最優先の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、当初予定していた国内外の図書館・文書館での資料調査を行うことができなかった。そのため、研究環境の整備を行うと同時に、これまでの調査で得た資料をもとに、マンスールの思想分析を中心に研究活動を進めた。しかし、ムハマディヤ参加以前のマンスールの活動、すなわち1910年代後半から彼がスラバヤを拠点に行なった活動についての資料は、未だ充分に収集できていない。2022年度に実施するインドネシア・オランダ調査で、それらを収集する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、2021年度に予定し、実施することができなかった国内での資料調査を2022年夏までに行う。その後、インドネシアとオランダで資料調査を行い、上述のふたつの検討課題に関連する資料を収集する。前者の検討課題(①)に関する論文を執筆し、研究成果として、2022年度内に国内の学術雑誌に投稿する予定である。
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Causes of Carryover |
世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、予定していた資料調査を行えず、旅費・人件費等を使いきることができなかった。これらは、国内での資料調査費用として使用するほか、モニターやスキャナーなど研究遂行に必要な機材の購入費用、英語論文投稿のための英文校閲料に充てることを考えている。
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