2021 Fiscal Year Research-status Report
Multispecies Ethnography of Pacific Oysters in Times of Uncertainty and Precariousness
Project/Area Number |
21K20067
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
吉田 真理子 広島大学, 人間社会科学研究科(国), 助教 (00911588)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 環境人類学 / マルチスピーシーズ民族誌 / 水産サプライチェーン / 不確実性 / 不安定性 / 気候危機 / 人新世(資本新世) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、気候変動による海洋酸性化や海水温の上昇、養殖漁業形態の変遷、食消費の変容に応じた染色体操作をはじめとする育種技術など、マガキのサプライチェーンの各局面で立ち現れる不確実性と不安定性の動態を明らかにすることを目的としている。マルチサイテッド・フィールドワークを研究手法として、マガキの商品流通過程に関わる諸アクターの社会的実践を考察する。マガキ、人間、ウイルス、養殖資材、計測シミュレーション機器等の関わりあいを通して、人新世/資本新世における水産サプライチェーンやドメスティケーションについて検討し、主に環境人類学・マルチスピーシーズ民族誌、科学技術社会論に新たな視座を提供することを研究のねらいとしている。
初年度は広島県廿日市市地御前の牡蠣養殖場、東京都中央卸売市場(豊洲市場)を対象に調査を実施した。本研究に係る成果出版物として、①近藤祉秋・吉田真理子『食う、食われる、食いあう マルチスピーシーズ民族誌の思考』(青土社)、②吉田真理子-アレックス・ブランシェット「工業型畜産における人間-動物の労働」、奥野克巳・近藤祉秋・ナターシャ・ファイン編『モア・ザン・ヒューマン マルチスピーシーズ人類学と環境人文学』(以文社)を刊行した。また、①の書評会を日本文化人類学会中四国談話会(2022年2月)、民博・共同研究会「カネとチカラの民族誌:公共性の生態学にむけて」(2022年1月)で実施した。本研究に係る単著査読論文2本を国際学会(4S、王立英国人類学協会)で発表し、ブックチャプター刊行に向けて加筆修正中である。政治生態学・マルチスピーシーズ民族誌・ニューマテリアリズム・フェミニスト科学技術社会論を架橋する問題意識を共有し、議論を練り上げている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パンデミックにつき上記の国際学会にはオンラインで参加した。そのため経費の使用状況が当初の予算計画通りに進まず次年度に繰り越している。日本国内での出版事業が円滑に進み国内の人類学者との交流を深めることができている。また調査に関しては、以前より構築していた人的ネットワークを生かし、広島県廿日市市地御前にて新たに聞き取り調査を実施することが可能となった。
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Strategy for Future Research Activity |
日本文化人類学会の公開シンポジウムに登壇し、本研究の成果報告の一部を発表予定(2022年12月)。2021年度に英国王立人類学協会で発表した単著査読論文をブックチャプター論文として出版予定。また国内の出版事業として科学技術社会論にかんする教科書に寄稿予定。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により国際学会への直接参加が叶わず、使用計画に変更が生じた。次年度使用額が生じた理由と使用計画:2023年3月にアジア研究協会でのパネル発表(米国マサチューセッツ州ボストン)、その他国際学会・ワークショップでの発表を予定している。社会情況によってはオンライン参加に切り替えることも予想される。国内調査(広島県廿日市市地御前、豊田郡大崎上島町ほか)は引き続き行う予定である。
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