2021 Fiscal Year Research-status Report
刑務所出所者等への社会復帰支援における多機関連携の展開可能性
Project/Area Number |
21K20083
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
石田 咲子 信州大学, 先鋭領域融合研究群社会基盤研究所, 助教(特定雇用) (90801085)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 刑事政策 / 刑事司法と福祉 / 社会復帰支援 / 再犯防止 / 多機関連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、刑務所出所者等を刑事司法システムから社会福祉システムへとつなぐ仕組みに焦点を当て、比較法的考察を通じて、わが国において適正かつ有効な社会復帰支援の展開可能性について検討し、再犯の課題を抱えているわが国において多機関連携の仕組みをどのように構築していくべきか、そのあり方についても明らかにしていくことにある。第1年度である令和3年度は、オランダにおける刑務所出所者等の社会復帰に関する取組みを調査し、その実態を解明する作業を中心に行った。具体的には、刑事司法システムや福祉システムに関する書籍・論文・報告書・統計資料等の収集と内容の整理を行った。本年度の研究成果は、以下の通りである。 (1)犯罪動向や犯罪者処遇、再犯の現状を中心としたオランダの犯罪統計を収集し、その資料の整理・分析を行った。 (2)「セイフティ・ハウス」の多機関連携の仕組みについて関連する論文・報告書等を収集し、その資料の整理・分析を行った。その結果、「セイフティ・ハウス」の連携組織でもある「エクソダス財団」(刑務所出所者等に対する居住支援を担う民間団体)が、オランダにおいて刑務所出所者等の再犯防止や社会復帰に大きな役割を果たしていることがわかった。 (3)「エクソダス財団」を中心に、オランダにおける刑務所出所者等に対する居住支援の仕組みや取組みについて関連する書籍・論文・報告書等を収集した。オランダにおいては物理的な宿泊場所の供与だけではなく、ストレングスモデルやエンパワメントアプローチに基づいた支援や入所者だけでなく退所者や入所者以外の者への継続的な相談支援など刑務所出所者等に対して幅広い支援を行っていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画調書作成時においては、令和3年度は「セイフティ・ハウス」の仕組みの効果、その仕組みを可能にしている理由を明らかにすることを予定していた。これについて、「セイフティ・ハウス」の多機関連携の仕組みについては研究が順調に進展する一方、その効果やその仕組みを可能にしている理由までは明らかにすることはできなかった。というのも、「セイフティ・ハウス」の多機関連携の仕組みを調査・分析した結果、刑務所出所者等に対する居住支援団体が再犯防止や社会復帰に大きな役割を果たしていることがわかり、「エクソダス財団」を中心に、オランダにおける居住支援団体の取組みも調査対象に含めたからである。しかしながら、今後わが国との比較検討を行っていく際、新たな民間の担い手という点からも居住支援の特徴的な取組みの実践及びその効果という点からも、「エクソダス財団」を調査対象の中心に据えて研究を続行することには大きな意味があると考えている。実際、オランダの多機関連携の仕組みの実態解明及び日本との比較検討に向けて示唆を得ることができ、今後の調査研究にとっても重要な基盤になった。 以上の事情により、「セイフティ・ハウス」の多機関連携の効果やその仕組みを可能にしている理由を明らかにすることができなかったことについては、現在までの達成度は「やや遅れている」と言える。ただし、これらに関しては令和4年度に実施することで研究目的は達成できるものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度となる令和4年度においては、第1年度の研究実績を踏まえつつ、継続して資料の収集・内容の整理を行うとともに、実態調査を実施することとする。とりわけ本年度は、オランダの関係機関を訪問し、オランダの実務家に対するインタビューを行うことを予定している。さらに、研究成果を学会や研究会で報告し、専門雑誌への論文の投稿を行い、広く社会に公表する。
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Causes of Carryover |
(次年度使用額が生じた理由)・当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだだめ、次年度使用額が生じた。 (使用計画)・次年度使用額は令和4年度請求額と合わせて外国旅費として使用する予定である。
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