2021 Fiscal Year Research-status Report
債務引受制度における併存的債務引受の位置づけー免責的債務引受との関係を中心にー
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21K20093
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
大橋 エミ 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 講師 (20909717)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 債務引受 / 併存的債務引受 / 保証 / 債務の負担 / 債務の設定 / 承継 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、債務引受全体の基礎理論を解明するために求められる免責的債務引受と併存的債務引受の関係の再検討という新たな問いを意識しつつ、併存的債務引という法制度の生成史を明らかにすることを目的としている。 2021年度は、実務において、保証等の法制度と併存的債務引受がどのように区別されるのかを明らかにすることを目標とし、ドイツの判例やその他の文献収集を行いつつ、それらの整理を行った。 併存的債務引受の生成史について、20世紀初頭にドイツ法学よりわが国に導入された債務引受概念によれば、併存的債務引受は、同様の担保的機能を有する保証と対峙するものとして位置づけられていた。ところが、その後のドイツの学説の展開をみれば、両者の区別を必要としない見解が登場する。この点については、学説上の展開が、どのような社会的要請に基づいていたのかを明らかにしていく必要がある。 実務における保証と併存的債務引受制度の相違に関する判例の分析については、現在、取り組んでいるところである。 また、近時のドイツにおいては、承継という法概念の中に債務引受を位置づけ、債権者の意思的関与を不要とすることによってより広範に債務引受を認めようとする見解(「承継保護論」)も見られる。免責的債務引受と併存的債務引受の両制度の関係を再検討するうえで、この見解については今後、より踏み込んだ研究が求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度は、保証等の法制度と併存的債務引受制度の実務上の相違を明らかにすることを目的として、ドイツの判例を収集して整理し、ドイツの社会状況等について、ドイツの研究者との意見交換を予定していた。 当初の計画では、①日本での文献収集に加え、②ドイツでも研究に必要な文献収集や意見交換を予定していたものの、計画の変更を余儀なくされた。①については、勤務校との関係から、当初予定していた文献へのアクセス方法が制限された。そのため、文献収集の方法を変更せざるを得なくなり、必要な文献収集に時間を要した。②については、新型コロナウイルス感染拡大に伴う渡航制限が継続したため、ドイツでの予定を中止し、可能なものについてはオンラインで対応した。 以上のことから、結果的には、文献収集及びその整理の両面において、当初の予定よりも多くの時間を必要とした。
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Strategy for Future Research Activity |
【現在までの進捗状況】において示したように、当初予定していた判例の収集とその分析に遅れが生じている。2022年度は、必要なデータベースの契約等資料収集の方法を改めることで、昨年度予定していた判例の分析をより具体的に行う。その際には、契約当事者の意思とそれに相応しい契約類型又は法制度という視点からの検討を行う。また、ドイツの学説についても引き続き文献収集及び議論の整理を進める。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ドイツへの渡航困難な状況が続く場合には、適宜、オンラインを活用して意見交換等を行う予定である。これらの作業で得られた成果については、研究会で報告し、助言を受けた後、批判的検討を加えてから、学術論文の公表を予定している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、主として、①新型コロナウイルス感染拡大の影響で国内外の移動が制限され、国内外の文献収集や研究会への参加等のために計上していた旅費を使うことができなかったこと、②当初購入を予定していたドイツの書籍の刊行が遅れたこと、③ドイツの判例収集に多くの時間を要し、当該判例に関連する図書の選別に時間を要したことにある。 ①の費用については、文献収集方法の変更し、データベースの契約等に使用する。②の費用については、当該図書が刊行され次第その購入費に使用し、また、③の費用についても、データベース等による文献収集方法を変更したことで必要な図書の選別が可能になるため、図書購入費については2022年度請求分と合わせて使用する予定である。さらに、2022年度に請求した国内外の出張費用についても、昨年度より移動の制限が緩和されると予想されることから、当初の請求通りに使用する予定である。
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