2021 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Research on the Behavioral Principles of Regulators in Welfare Governance
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21K20103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
成 鎮宇 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (80911859)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 福祉政策 / ガバナンス / 規制 / 政策実施 / 介護保険制度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、民間事業者に対する事後規制という自治体の行政活動に注目し、これが様々な制約の下でどのように実施されているのかを実証的に分析するものである。具体的には、限られた行政資源と情報の非対称性という構造的な制約をかかえている各自治体の規制機関が、それらをどのように乗り越えつつ「福祉ガバナンスの規制者」としての役割を果たしているのかを明らかにすることを目的としている。本年度は、下記のように二つの作業を同時に進めた。 第一は、先行研究を検討しつつ、事後規制の実施における規制機関の行動パターンを類型化したことである。この作業については、海外の先行研究からの示唆をもとに、様々な制約の下で実地指導の実施を担う規制機関の行動パターンを大きく4つに類型化し、具体的な分析を行うための理論枠組みを設定することができた。 第二は、事後規制の実施に期待できる政策効果の分析結果を学術論文としてまとめたことである。当初は、各自治体の規制機関に対する実態調査(調査票調査とヒヤリング調査)を行うことを予定していたが、これを準備する過程で事後規制の実施を分析する学術的な意義を明確にする必要性を感じたからである。具体的には、自治体による事後規制の実施率が高いほど、事業者によるモラルハザードの発生が抑止されうるという政策効果を、政令市単位のパネルデータを用いた操作変数法によって実証した分析結果をまとめ、学術論文として公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は事後規制の実施に期待できる政策効果の分析を学術論文としてまとめる作業を優先した。この作業は各自治体の規制機関に対する実態調査を具体的に企画する過程において、事後規制の実施という行政活動の重要性を学術的に位置づける必要性を改めて実感したからであり、論文の採択にまで至る大きな成果を得た。ただし、自分のエポートが分散されたことも事実であり、当初予定していた実態調査の実施にまでは至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き理論枠組みの細密化を図りながら、各自治体の規制機関に対する実態調査を並行して行う。実態調査は、調査票調査を先行し、その結果から規制機関の行動パターンを類型化した作業の妥当性を確認する。そして、各類型に該当する自治体に対するヒヤリング調査を併用しつつ、同様の制約要因を抱えている各規制機関が事後規制の実施において、どのような選択を、なぜ行っているのかを実証分析することとしたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の感染拡大によって参加予定の学会が全てオンラン開催となったことや、資料収集のための現地調査なども難しくなったことから、本年度に予定していた出張を行うことができなかった。また、本年度中の実施を予定していた実態調査がその準備作業にとどまったこともあり、結果として次年度使用額が生じた。次年度は、出張や調査経費として次年度使用額を適切かつ有効に活用しつつ、研究課題の解明に積極的に取り組んでいきたい。
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