2021 Fiscal Year Research-status Report
The Politics of Temporary Labour Migration: Towards a New Democratic Governance
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21K20110
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
宮井 健志 成蹊大学, 法学部, 客員准教授 (90912296)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 移民政策 / 移民出稼ぎ / 民主主義 / 政治理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、国境を越える一時的な労働移動、いわゆる「移民出稼ぎ」に関する受入国と送出国の政策関与のあり方を実証的に明らかにし、両国家による民主的責任の分有を通したガバナンスの可能性を思想的に探求するものである。 本研究の関心は、「移住者に対してその受入国と送出国はいかなる責任を負っており、また負うべきなのか」という問いにある。本研究は、この問いに経験と規範の両面から接近し、移民出稼ぎ政策について体系的な知識と実践的な政策指針を提供することを目的とする。そのために、本研究は、(1)移民出稼ぎ政策に関する新たな分析モデルの確立、(2)受入国・送出国の政策関与のモデル化と分析、(3)現実的かつ規範的な政治指針の提示という三つの課題に取り組む。 実施初年度となる2021年度は、主に(1)と(2)の移民出稼ぎ政策に関する分析モデルの確立と政策関与のモデル化に取り組んだ。具体的には、①各国の政策を法的保護・社会的支援・政治的代表の三つに区分し類型化した後、②受入国と送出国の政策関与のあり方に応じて四つの理念型を析出することを目指した。これにより、受入国と送出国との相互関与を統合的に理論化することで、経験的研究と規範的研究のいずれにも貢献しうる知識枠組みを定立するべく研究に取り組んだ。 研究成果としては、2021年度は本研究のテーマに関係する二つの学術論文を公表することができた。また、移民出稼ぎに関するパブリックセミナーへの登壇や、ウクライナ避難民を中心とする難民問題についてのコメンタリーを発表するなど、アウトリーチ活動にも積極的に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね順調に研究は進展しており、研究成果の公表も進んでいる。 2021年度は、本研究に直接関係する二つの査読論文を公表することができた。まず、『移民政策研究』 所収の論考では、移民出稼ぎに関する先行研究を広範にレビューし、その上で、移民出稼ぎを公正に統御するための国境を超えた民主的ガバナンスの必要性を主張した。また、『年報政治学』所収の論文では、特に在外国民と移民送出国について、在外選挙制度と在外国民評議会について経験的・規範的な検討を行なった。これらはどちらも本研究の関心と直接結びつく基幹的な成果である。 また、研究の内容面でも、法的保護・社会的支援・政治的代表からなる政策モデルの精緻化や、アジア諸国の移民送出政策の事例分析に取り組み、体系的な検討を行うことができた。これらの検討結果についてもそれぞれ論考に順次まとめており、順調に進捗しているといえる。 コロナ禍による影響を受け、海外での実地調査などについては差し控えざるを得なかった。しかし、その中でも、国立社会保障・人口問題研究所の「第26回厚生政策セミナー」への登壇をはじめ、国内でのアウトリーチ活動と研究ネットワークの拡大には取り組むことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も、研究計画に沿って課題に取り組む。 2022年度の主な課題は、三つの課題のうち(2)受入国・送出国の政策関与のモデル化と分析、(3)現実的かつ規範的な政治指針の提示を完遂することである。(2)については2021年度の段階でおよその目処をつけることができた。そのため、(3)の政治指針の提示を中心として課題に取り組んでいく。これらの研究活動と並行して、シンポジウムや公開セミナーなどのアウトリーチ活動にも取り組む。 コロナ禍の影響により2021年度に実施することが困難だった在外調査・学会報告については、感染状況に鑑みながら、積極的に実施していきたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍の影響により、国内外での実地調査の遂行を差し控えざるをえなかった。 翌年度分として請求した助成金については、感染状況に鑑みつつ、実地調査と研究報告のための費用に充てる。
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