2021 Fiscal Year Research-status Report
ミゲル・アバンスールの批判的政治哲学:デモクラシーの核心としての「批判」概念
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21K20115
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
和田 昌也 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (30910088)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 批判 / アバンスール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度においては、次年度における研究のアウトプットに向けて、論点整理に注力した。とりわけ、次の二点がその具体的内容である。 第一に、社会哲学、政治哲学双方にまたがる「批判」に関する様々な研究の分析を行った。それらの論点は多岐にわたるものであるが、大別すれば、活動主体を模索するものや、活動主体そのものの実践として位置づけるものなど、理論を重視するか、実践を重視するか、古くて新しい問いを巡って議論が分岐していることが明らかになった。 その一方で、本研究が着目する、不正義の経験から出発しようとする「内在的批判」は、そのような理論と実践の対立を超える方途を示しつつあることが浮かび上がってきた。しかし、やはり、政治社会への参画の「条件」を十分に示し得ない恐れも同時に生じてくるようにも思われた。この点、「批判」の目的と対照させ、なぜいま「批判」なのか、その可能性と限界を明確にする必要を理解するに至った。 第二に、アバンスールの「批判」概念について考察を行った。特に彼が、いつ、いかなる仕方で当概念に着目し、自らの研究の中心に据えるに至ったを詳細に分析した。その際、手掛かりとなった著作のうち、最も重要なものが、彼自身の貴重な証言ともなっているLa Communaute; politique des tous uns: Entretien avec Michel Enaudeau(Les Belles Lettres, 2014)であった。本書で彼が説いていることと、彼の他の著作との議論との比較検討を通じて、それらの点を明確にするとともに、彼の思想の成立背景について、理解を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、次年度にはいってすぐに開催が予定されていた、アバンスールについてのカナダでのカンファレンスに登壇すべく、アバンスールの批判概念の考察に多くの時間と労力と割いてきたが、新たなパンデミックによって、半年の延期を余儀なくされた(2022年秋)。それによって、次年度に予定していた成果報告の順序に多少の影響が出ることとなったが、本年度は、それらに向けた準備に充てていたために、大幅な遅れに直結することはなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通りに今後も遂行する予定である。ただ、上で示したとおり、カンファレンスの延期によって、論の全体を組み立てる必要があることから、若干の修正を行う必要がある。とはいえ、大きな変更の必要は生じず、着々と進めていきたい。
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Causes of Carryover |
主として、カナダのカンファレンス準備に向けた研究費が、カンファレンスの延期によって、未使用になっているため。ただし、半年に延期とのことで、2022年秋の開催が決まったことから、次年度に計画通り、使用することとなる。
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