2022 Fiscal Year Annual Research Report
宗教意識と主観的ウェルビーイングの関連メカニズムに関する計量的研究
Project/Area Number |
21K20173
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
清水 香基 北海道大学, 文学研究院, 助教 (20907563)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 主観的ウェルビーイング / 日本人の宗教意識 / 測定の不変性/等価性 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度である2022年は、他研究プロジェクトの共同調査というかたちで、全国 18歳から45歳の男女2,000 名を対象とした「若年層の文化・健康・宗教に関する意識調査(代表:樋口麻里・清水香基)」を実施し、調査報告書の作成及び学会等での報告を行なった。本研究から得られた主な成果として、以下に2つの知見をあげる。 (1). 日本人の宗教的な行動・信念は、①伝統・慣習的なもの、②制度宗教的なもの、③スピリチュアルなもの、という3つのタイプに分けて捉えることができる。また、行動と信念は正の相関関係にあり、上記の①から③のいずれにおいても、より頻繁に宗教的な行動をするという人ほど、より強い信念を有している傾向にある。また、宗教的な行動、宗教的な信念は、いずれも主観的幸福感と弱い関連がある。宗教意識と主観的幸福感の関連は従来から指摘されてきたが、こうした研究は主として欧米におけるキリスト教的な宗教理解の枠組みのもとに進められてきた。本研究は、初もうで、先祖祭祀、地域の祭礼への参加といった、日本を特徴づける伝統・慣習的な宗教行動や、それと関連する信念についても、類似の関連があることを示した点で意義がある。 (2). さまざまな宗教的行動に対する「意味づけ」を尋ねると、それぞれの宗教的な行動について、より頻繁にその行動をしているという人ほど、その行動を「ただの慣習にすぎず、宗教的な意味はない」と回答する傾向が認められた。以前から、日本を含む東アジア諸社会では、自覚されることのない、日常生活の中に埋め込まれた宗教意識のあり方が主流であるという指摘があり、欧米主導の国際比較宗教研究において「宗教団体への所属」や「宗教性の自己評価」といった尺度が採用されることへの批判が繰り返されてきた。上記の知見は、こうした東アジア宗教研究者による、往年の議論を支持する貴重な経験的証拠を提供するものとして、重要な意義を有する。
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Research Products
(10 results)