2021 Fiscal Year Research-status Report
在日外国人に対する母語教育の展開と課題に関する研究
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21K20174
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
佐々木 優香 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (60907799)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 母語教育 / 移民第二世代 / 親子間コミュニケーション / 移民の社会統合 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主に文献調査と現地調査の準備に注力した。文献調査では、日本の母語教育の歴史的展開と現状について、関連する研究や政府関係資料を整理した。文献調査からは、日本における母語教育をめぐる議論が、民族教育や多文化共生教育と、移民の出身国政府によるディアスポラ政策という2つの異なる枠組みでなされていることが分かっている。 現地調査の準備に関しては、第一に2020年末に実施したブラジル人家庭の親子間コミュニケーションに関するアンケート調査結果の分析考察を行った。この結果を踏まえた追加調査項目を作成し、ポルトガル語への翻訳作業も終えている。 第二に、調査結果から浮き彫りとなった、母語学習機会としてのブラジル人学校の役割について明らかにすべく、ブラジル人学校に訪問し、コロナ以前に開催されていた休日のポルトガル語教室について聞き取り調査を実施した。聞き取り調査からは、継続的なポルトガル語教育の難しさが理解できた。また、子どもをポルトガル語教室に通わせたくても、仕事による時間的制約や経済的な負担によって断念せざるを得ない家庭があることが分かり、こうした実態を質的調査を通じてより明確に把握するという課題が見えた。 第三に、エスニックコミュニティ間の母語教育をめぐる意識のちがいを検証するためのアンケート調査に向けて、対象地の教育委員会にコンタクトをとり、言語のニーズや好ましい調査方法(紙媒体かオンラインかなど)についてアドバイスを得ることができた。 今後は、引き続き教育委員会と連携を取りながら、同時にアンケート項目の多言語翻訳を行ったうえで、調査を実施していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象地の教育委員会に依頼し、教育現場における外国にルーツをもつ子どもの在籍状況や言語のニーズについて情報提供をもとめながら質問紙を作成する必要がある。その際、人権保護の観点から、児童生徒の国籍情報を収集しないなどの対応をとる学校もあるため、準備の段階での情報収集が大変重要であり、予想よりも時間を要している。また、当初予定していた紙媒体でのアンケート用紙配布に関しては、新型コロナウイルス感染対策のほか、協力してくださる教員の負担軽減を考慮しGoogle Formsへの移行を検討せざるを得なくなった。質問紙の多言語翻訳をこれから行うため、すぐには調査が実施できないことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
異なるエスニック集団を分析の射程に含めた調査を実施し、異なる出自や滞日状況のちがいが母語教育に対する意識に及ぼす影響を分析する。これと同時に、ブラジル人家庭に向けた追加調査を実施する。具体的には、これまでに得られた親子間コミュニケーションをめぐる課題の原因について、広い視野からの考察を行うことで、母語教育におけるニーズ把握と課題の抽出を行う。
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Causes of Carryover |
当初購入を予定していたプリンターのトナーカートリッジの消費が思ったよりも遅く、購入の時期を延ばしたため、次年度購入を予定している。 当初はアンケート調査の多言語化において、いくつかの外国語への翻訳依頼を検討していたが、翻訳を必要とする言語の選定が遅れており、現段階ではポルトガル語のみの依頼にとどまった。そのため、次年度には翻訳言語を決定のうえ、速やかに依頼を行う予定である。
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