2023 Fiscal Year Annual Research Report
Social Mobility of Immigrant Youth in U.S.: Focusing on the Impact of Social Stratification by DACA Program
Project/Area Number |
21K20177
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
飯尾 真貴子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 講師 (50906899)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 / 選別的移民政策 / シティズンシップ / 社会階層移動 / DACAプログラム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、2012年よりアメリカ合衆国(以下、米国)で実施されている、特定の非正規移民の若者に対して暫定的な権利を付与する「DACAプログラム(若年移民に対する強制送還延期措置)」が、若者たちにどのような影響を及ぼしているのか、特に社会移動の経験に着目し検討することである。 従来の先行研究では、①ジェンダーや人種・エスニシティなどの多様性をふまえた具体的な経験の差異、②同じ移民1.5世代でも、様々な理由で権利を獲得できなかった層の経験が十分検討されていないという限界がある。これをふまえて、アジア・パシフィック系移民およびラティーノ移民のなかでも先住民の出自を持つ移民1.5世代、そしてDACA世代でありながら様々な事情でDACAを取得できずにいる移民にも聞き取りを行った。 2023年度の研究成果として、主に米国カリフォルニア州フレズノ郡におけるフィールド調査の実施があげられる。フレズノ郡の移民支援団体の職員および先住民出自の移民1.5世代複数名に聞き取りを行い、DACAの取得が一定の安定性をもたらしている一方で、実際の労働市場において社会上昇をもたらしていないことも明らかになった。この要因として、人的資本の欠如に加え、農業といった特定の産業に集中する先住民移民の限られた社会関係資本が、異なる産業への移行に制約をもたらしていることが考えられる。また、10代半ばから学校に通わずに労働に従事していたことで、米国での継続的な滞在を証明することができず、DACAを取得できず無登録移民のまま生きる人々も一定数いることが確認できた。本研究は、DACAの取得による社会上昇を指摘する既往研究を否定するものではないが、DACA世代でありながら無登録移民のまま生きざるをえない人々や、DACA取得が必ずしも社会上昇にはつながらない移民とその家族の直面する困難の一側面を明らかすることができた。
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