2022 Fiscal Year Research-status Report
現代社会におけるモノ・ごみと人々の関わり方の特徴:フリマアプリ利用者への調査から
Project/Area Number |
21K20187
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
梅川 由紀 神戸学院大学, 現代社会学部, 講師 (00909476)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | ごみ / モノ / フリマアプリ / 所有 / 廃棄 / マテリアル・カルチャー研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は「フリマアプリ利用者にとってモノを所有することや、ごみとして廃棄することはどのような行為であるか」という問いの探求を通して、「現代社会における、モノやごみと人々の関わり方の特徴」を明らかにすることである。具体的には「(1)フリマアプリ利用者へのインタビュー調査」と、「(2)理論的考察」により、明らかにすることを目指している。 2022(令和4)年度は大きく二つの作業を行った。第一に2021(令和3)年度に引き続き、上記(2)の「理論的考察」を行った。マテリアル・カルチャー研究の関連文献を中心に、衛生・清潔に関する文献、ごみとの付き合い方の歴史的変化に関する文献などを読み、研究テーマに対する社会学的な理解を深めた。 第二にインタビュー調査を実施した。2022年10~11月に、フリマアプリ利用者の30代女性、10人に実施した。インタビューは1人当たり概ね1時間行い、社会状況や当事者の希望をふまえて全てオンラインで実施した。調査実施後には謝礼としてギフト券を配布した。具体的な質問内容は、「フリマアプリの利用状況」「フリマアプリで売り買いする行為や目的」「フリマアプリで売り買いするモノ」「想い出と所有や廃棄の関係」「売ることと捨てることの違い」などについてである。インタビューの結果、大きく三つの知見を得た。一つ目は、フリマアプリでモノを売る人・買う人は、モノに残る所有者の「痕跡」を強く意識していることである。二つ目は、フリマアプリでモノを売る人は、売りに出すモノが「モノであり続けること」を強く望んでいることである。三つ目は、モノともごみともいえない対象を「マージナルな対象」と名付けると、フリマアプリでモノを売る人には、マージナルな対象が「見える化」していることである。これらの知見はモノ・ごみ、所有・廃棄の概念整理において示唆的であり、今後さらに分析を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
もともと対面でのインタビュー調査実施を望んでいたことから、社会状況(新型コロナウイルス)の様子などをうかがううちに調査開始が遅れてしまった。その結果、研究自体もやや遅れが生じている。最終的にインタビュー調査はオンラインで行い、実現することができた。実際にオンラインで行ってみるとメリットもあった。一つ目は、移動時間などを節約できることから、忙しいインタビュー対象者にも時間を工面いただき、有益な聴き取りが可能となったことである。二つ目は、インタビューを短期間に集中して実施できたことである。このように着手時期は遅れたもののインタビュー調査自体は円滑に終了できたため、2023(令和5)年度(補助事業期間延長承認済)はインタビュー結果の分析に注力する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2023(令和5)年度は、2022(令和4)年度に実施したインタビュー調査の分析を進める。さらに、これまで行った/これから行う学会報告で得たコメントや理論的考察の結果を踏まえながら、研究をまとめあげることを目指す。具体的には、分析作業を進める中で追加のインタビュー調査の必要が生じた場合は、夏頃に実施する。そのうえで秋頃に学会発表を行い、内容のブラッシュアップを試みる。そして年度内には成果をまとめる予定である。インタビュー自体は終了していることから、現時点で懸念される大きな課題はなく、研究は十分遂行可能と考えられる。
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Causes of Carryover |
最も大きな理由は、社会状況(新型コロナウィルス)を考慮してインタビュー調査の開始時期が遅れたことである。インタビュー調査実施後に分析作業を行うが、分析時には文献などの購入・複写が必要となることを想定していた。さらに分析を進めるうえで、追加のインタビュー調査が必要になるケースも想定していた。インタビュー調査の開始時期が遅れたことで分析作業着手にも遅れが生じ、上記の予算を執行する機会のないまま年度が終了し、次年度使用額が生じるに至った。さらに、社会状況(新型コロナウィルス)を考慮して、海外の学会報告を見送り国内の学会報告に切り替えたことや、インタビュー調査を全てオンラインで実施したことで、当初の予定より旅費をおさえることができ、次年度使用額が生じるに至った。 次年度の使用計画は主に以下の通りである。第一に、追加のインタビュー調査の必要が生じた場合にはその旅費や謝礼として使用する。第二に、調査・分析を進める中で必要となる物品費(消耗品、図書など)・その他(文献複写費)などに使用する。第三に、学会報告のための旅費として使用する。
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