2021 Fiscal Year Research-status Report
占領期沖縄の「島ぐるみ」土地闘争における抵抗主体の移動経験
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21K20198
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
岡本 直美 同志社大学, 研究開発推進機構, 助手 (20906630)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 沖縄戦後史 / 土地闘争 / 移動 / ライフヒストリー |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、研究対象である沖縄県伊江島の反米軍基地運動である伊江島土地闘争に焦点を当て、抵抗者(被土地接収者)の戦前の移動経験と軍用地接収地である真謝区の歴史について資料を収集・整理した。 成果報告に関して、まずは、2021年度カルチュラル・スタディーズ学会年次大会にて、「島嶼における「生」からたどる歴史」とのタイトルでパネル報告を行った。本パネルの主旨は、島嶼地域で生きる人びとの生(ライフヒストリー)から歴史(像)を再検討するものである。島は、孤島性や閉鎖性、あるいは辺境性や従属性というイメージを抱かれてきた側面がある。一方で、島であるがゆえの開放性や自律性といった可能性をもつ場としても位置付けられてきた。それでは、島で暮らす人びとの「生」からたどると、歴史はどのように描かれ得るのか。そして、人びとは何を拠り所として生きてきたのかという視点にもとづいて、戦争や植民地、占領の歴史がどのように記憶され、発せられてきたのかを、島で生きる人びとの自治的意志の視点から考察した(岡本直美「米軍統治下沖縄における伊江島土地闘争の再検討―開拓地・移動経験の視点から―」)。 沖縄県伊江島で展開された伊江島土地闘争を報告対象とした。従来の沖縄戦後史において、伊江島土地闘争は復帰運動や反米軍基地闘争の前史として位置づけられ、「抵抗する主体」として評価されてきた。このように沖縄を代表する運動の一つとして認識されてきたものの、伊江島の離島性は看過されてきたといえる。そこで本報告では、「抵抗」を前提に闘争を分析するのではなく、離島で生きる人びとの「生」から土地闘争を再検討した。さらに、軍用地接収地である伊江島真謝区は、開拓地であり、また、住民の移動経験が堆積された場でもある。この点に着目し、人びとが土地接収に反対する根拠としてのライフヒストリーを移動の観点から検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、既に収集済みの資料を中心に資料整理・分析を行った。したがって、研究はおおむね順調に進展している。一方で、コロナ禍の状況が継続しているため、沖縄での現地調査も回数や調査場所が限定された。
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Strategy for Future Research Activity |
屋取の歴史に関して、沖縄県公文書館にて、特に沖縄県北部の屋取の足跡を明らかにする。沖縄県立図書館にて沖縄の字誌を分析し、抵抗主体のルーツである寄留民と土地との接点を解明し、寄留民としての抵抗経験が戦後の反米軍基地闘争にいかなる影響を与えたのかを明らかにする。 そして、占領期の沖縄で導入された米国の近代的農業技術と農民生活への影響に関する調査を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で現地調査に行くことが困難であったため、当初計画していた通りの出張が実施できなかった。2022年度は2021年度と比較して、国内・海外への移動が可能になると推測されるため、2021年度にできなかった現地調査を行う。
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Research Products
(2 results)