2021 Fiscal Year Research-status Report
Quantitative analysis on Internal differentiation among part-time workers and inequality of the labour market
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21K20200
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Research Institution | Osaka University of Commerce |
Principal Investigator |
佐野 和子 大阪商業大学, JGSS研究センター, 研究員 (70909960)
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Project Period (FY) |
2021-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 労働市場 / 不本意非正規就労 / 職業構造 / 二極化 / JGSS / 就業構造基本調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1990 年代後半以降の日本社会に広く定着した社会的格差の象徴としての非正規雇用拡大実態を、非正規雇用者の内部の分化を表す指標である<不本意非正規就労>、ならびに<職種>を活用し、どの職に就く、誰が、どのような困難に直面しているのかについて、実証的知見を示すことである。 この目的のもと、2つの段階による分析課題を設定した。第1は、「就業構造基本調査」2007年、2017年の個別データを用いて、非正規雇用がどのような職種に分布し、その状況が10年間でどのように変化したのかを分析すること。第2は、その全体的な変化の内訳を、JGSS-2021の新規設問である、<非正規雇用に就いた理由>に関する変数を用いて明らかにすることである。 初年度にあたる令和3年度は、第1の課題に取り組んだ。具体的には、「就業構造基本調査」に含まれる職業小コードを賃金レベルによってランクづけるための分析を行った。この目的は、教育歴、仕事満足度との相関が高く、職業のレベルを最も代表的に表すとされている収入レベルによって、各職業の特性を計量的に捉え、これ以降の分析の基礎となる指標とするためである。「就業構造基本調査」の職業小コードの利用、ならびに2017年の個票データの利用はオンサイト利用に限定されるため、所属研究機関の協力を得て、オンサイト施設にてこの課題に取り組んだ。その成果の一部は、令和3年11月の日本社会学会、ならびに令和4年3月のJGSS研究センター研究発表会2021において発表した。また令和4年2月に査読付き学術雑誌に論文を投稿し、現在、審査結果を得て、修正稿を執筆中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【研究実績の概要】欄に記した2つの分析課題のうち、第1の課題である、非正規雇用者の就く職業の特性を捉えるための分析を行った。具体的には、「就業構造基本調査」2007年、2017年の個別データを用いて、非正規雇用が賃金分布上のどのレベルの、どのような職種に分布し、その状況が10年間でどのように変化したのかを検証した。まず職業をランクづけるために、2007年の職業ごとの平均賃金の推定値を算出し、この値を用いて、職業小分類を5つのグループ1-5Qに分類した。その後、非正規雇用者が2007年、どのグループのどのような職業に就いているか、その傾向は、性別や教育歴といった属性によってどのように異なるかを検討した。さらに、属性ごとの状況が、2017年にどのように異なる変化パターンをみせるのかを記述的に分析した。 得られた主たる知見として、2007年以降の10年間は、全体として賃金レベル低位の職業は拡大せず、むしろ賃金レベルの中から中の上レベルの職業が拡大し、雇用構造は上方にアップグレードしていることを確認した。非正規雇用についても同様に、賃金レベル5分位の最下分位では拡大していないこと、女性の非正規雇用者はサービス職・販売・事務との間の移動が多いが、賃金レベルでみた上方移動はともなっていないこと、などを確認した。 以上に加え、本年度の研究課題を進める中で、新たな研究課題が浮上した。非正規雇用と正規雇用の間には、異なるパターンのキャリアの流動性があり、この点が、雇用形態によるライフチャンスの格差となっていることを示唆する分析結果が得られ、この点を解明するためのさらなる分析が、次年度以降の課題に追加された。 以上に記した今年度の研究成果は、第2の課題の基礎となる。本年度の研究成果をもとに、次年度は、<非正規雇用に就いた理由>の指標を活用し、非正規雇用者の内部分化に関する分析に取り組む。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の初年度(令和3年度)は分析と学会発表に注力した。最終年度に当たる令和4年度は、夏までに分析の総まとめを行い、夏以降は学会発表から得られるフィードバックも参照しつつ、特に論文執筆に注力する計画である。具体的な計画内容は以下の通りとなる。概要 ①【研究実績の概要】に記した2つの分析課題のうち、第2の研究課題に取り組む。初年度に取り組んだ、「就業構造基本調査」を用いた分析により明らかとなった非正規雇用者の職業構造全体における状況を、さらに詳細にとらえるため、JGSS個票データを用いた分析を行う。JGSS-2021の新規設問である、<非正規雇用に就いた理由>に関する変数を用いて、非正規雇用者のタイプを厳密に分類する。なかでも、<不本意非正規雇用>を選択した回答者に注目し、どのような属性を持つ個人が、どのような状況で不本意非正規就労しているのかについて、記述的分析、多変量解析を行う。 実際の分析に先立ち必要な作業として、JGSS-2021に含まれる当該新規設問に関する回答を整備すること、さらに、「就業構造基本調査」の職業小コードと、JGSSデータの職業コードを統合する作業が必要となる。6月中にこの作業を終えて、7月以降に集中的に分析に取り組む。 ②分析と同時並行で、研究成果の公表のため、学会発表と論文執筆に取り組む。 学会発表については、7月には国際学会SASE(Society for the Advancement of Socio-economics)、9月には日本教育社会学会、11月には日本社会学会での成果発表を行う。論文については、昨年度に投稿した、論文の修正稿を7月末に提出する。これとは別に、今年度に行う国内外の学会発表の内容を基に、2つの論文を投稿する予定である。
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Research Products
(6 results)